作品鑑賞ツール「Art Dialog in the Room」のご案内
ベネッセアートサイト直島では、2010年より「対話型鑑賞プログラム」を導入しています。対話型鑑賞とは、他者との対話を通じて作品を鑑賞する手法です。時間をかけてひとつの作品を観察しながら「どんな風に感じますか」「どこからそう思ったのですか」などの問いかけに答えていきます。自分の内にある考えを言語化し、ファシリテーターや他の鑑賞者との対話を通じて視点や思考を深め、自由に思考を広げていける、そんな体験を目指しています。
そんな対話型鑑賞を、宿泊中により気軽に体験いただけるよう、ベネッセハウスでは2023年4月より作品鑑賞ツール「Art Dialog in the Room」を導入しました。
ベネッセハウスの客室には、全65室それぞれに異なるアート作品が展示されています。宿泊者の方は、部屋に設置されたQRコードをご自身の端末で読み込んで、回答ページにアクセスできます。「どこから見るのが好きですか」「どんな感情を抱きましたか」といった質問が表示され、作品を見ながらウェブ上で回答します。時には室内を移動して視点を変えたり、一緒にお泊まりの方と会話したりしながら自由に答えをつくっていきます。
回答が終了すると、他の人が残したコメントを見ることができます。
全タイプのお部屋のコメントが読めるので、過去に同じお部屋に泊まった方のコメントを見て違いを楽しんだり、他の客室の作品に関するコメントを見て想像をふくらませるのも面白いかもしれません。
この「Art Dialog in the Room」の導入にあたって、ベネッセアートサイト直島のスタッフ向けに体験会を実施しました。日々ホテルで働くスタッフにとっても、客室の作品をじっくり見る体験は新鮮だったようです。
<体験したスタッフの感想コメント抜粋>
・じっくり作品を観ることで、自分でも「こう感じるんだ」という発見があった。
・作品を通して瀬戸内の景色を新たな角度で見ることができた。
・客室というプライベートな空間で行うことで開放的に物事を考えることができ、内省につながった。
・このコンテンツを体験することで、お部屋でより心地よく過ごすことができるようになるのではないかと思う。
・過去の体験を思い出す質問は、「今の自分」と対話していることを感じられた。
・複数人で作品について話すのが楽しいと感じた。
・このツールを体験したおかげで、その後の美術館での作品の見方が変わった。
ベネッセアートサイト直島では、"自分にとっての「Benesse」(よく生きる)とは何か"を考えていただく体験を大切にしています。訪れる方から、「アートに興味はあるけれど、どう鑑賞したらいいかわからない」という声をいただくことも多いですが、現代アートに決まった見方や正解はありません。
作品を鑑賞しながら思考をめぐらせることで、視点が変わり、新たな自分に出会い、「自分だけの答え」を見つけられるかもしれません。同じ作品でも、見る季節や時間帯、その時の気分で感じ方は変わってくるもの。客室での作品鑑賞体験をきっかけに、ベネッセアートサイト直島での体験や、旅を終えてからの美術館やギャラリーでの作品鑑賞もより楽しめるようになるのではないでしょうか。
「Art Dialog in the Room」で、皆さまの鑑賞体験がさらに豊かなものになることを願っています。