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自然・景観維持の取り組み

直島ランドスケーププロジェクト

直島南部の瀬戸内海の原風景を重要な資源と捉え、建築・アートと調和するように整備・維持・活用することを目的に、直島ランドスケーププロジェクトは始まりました。ベネッセアートサイト直島では、これまでも「自然・建築・アートの共生」のコンセプトのもとに作品と周囲の景観を整えてきましたが、プロジェクトを通じてさらに、点在する作品をつなぐ「あいだ」を含めたエリア全体をひとつながりに読み取り再評価することで、風景への働きかけ方を思考し続けています。

プロジェクトの取り組み

  • Base
    00

    エリアの景観価値を再評価し自然資源を活かす

    2017年、ランドスケープデザイン事務所「ユニットタネ」を監修者に迎え、直島南部のゲート内エリアが持つ景観の価値や課題について知ることから始めました。地理的、地形的な特徴から、眺めうる景勝、起こりうる現象、移動による視点変化などのエリアの魅力を整理し、様々な取り組みへとつなげています。

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    (左)「図」となる作品を支える、「地」の景観分析の一部
    (右)エリアの地形分析 - 鼻凸・浦凹をめぐる「ひとつながりのみち」
  • Case
    01

    日常的な場内管理

    直島ランドスケーププロジェクトでは、「図」と「地(じ)」の2タイプの管理方針を設定しています。「図」の管理は、庭園など対象が周囲より浮かび上がり主体となる場合に行い、「地」の管理は、「図」を引き立てる背景として、周囲に広がる瀬戸内の自然や景観との同化をめざして行います。ベネッセアートサイト直島の緑の管理のほとんどが、作品を支える「地」の管理であり、意識的に行うことで景色が変わることを実感しています。

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    「作品の見え方や管理作業をする視点など関係者が集まって意見を交わす」
  • Case
    02

    腰かけたい場所シェア

    「腰かけたい」と感じたスポットをゲストからお聞きし、実際に屋外ベンチを置いてみようという取り組みです。情報ツールを利用し、「誰かに感じたことをシェアする」「誰かが勧めた景観を眺めてみる」という現地での体験を提供する試みで、2021年から3年計画で展開しました。地域工務店によって製作されたベンチの運用は続き、ベンチそのものが景色の中にどのように存在できるか、ゲストがどのような場所で時間を過ごしたいか、などを可視化し検証する媒体となっています。
    「腰かけたい場所シェアプロジェクト」

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    (左)腰かけたい場所のシェアを呼びかけるチラシ
    (右)砂浜のベンチは人気スポット
  • Case
    03

    地域苗生産

    直島の人たちが昔から親しんできた「普通の風景」を保つために、土地に自生している植物(在来種)の種や枝から苗木を育てています。島の緑は、土壌が薄く貧栄養な土地に育つ、潮風に耐える植物で構成されています。市場流通性が低いものも多く船で運んでくるエネルギーを考えても、島内で苗木を育てることに大きな意味があります。取り組みは2018年にスタートし、種探し散策・採取・種蒔きイベントも行っています。生産ハウスでの管理ノウハウも徐々に蓄積され、直島ならではのものにカスタマイズされてきています。ベネッセアートサイト直島の敷地には過去の土地開発や自然災害で本来の植生が失われた場所があります。そのような緑地の復元や更新に地域苗を利用しています。

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    (左)種子採取散策で直島を知る機会
    (中央)島民向け開催のイベントチラシ
    (右)直島の種子や枝から育ち植栽を待つ苗
  • Case
    04

    崩落斜面の緑化

    花崗岩でできた直島は、周辺の瀬戸内の島々と同様、時間をかけて丸く丸く削られて、現在の地形となっています。雨の少ない瀬戸内ではその速度もゆっくりであったはずですが、近年の豪雨や長雨によって、2017年から22年にかけて数か所で斜面崩落が発生しました。山の斜面は景色を作る重要な「地」として周囲の自然と調和していくことを目指します。特殊な斜面保護技術を採用して厚めの植栽基盤を備え、表層の土にはスタッフが島内で集めた種子を混ぜる試みをしました。

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    (左)実を採取し種子を取り出すスタッフ(2018年)
    (右)三角形をした若草色の斜面が崩落跡地。周辺との境界があいまいになり始めている(2024年)(写真:宮脇慎太郎)
  • Case
    05

    ミモザ(モリシマアカシア)林の更新

    かつてアカシア類は、早期緑化材として日本各地に植栽されました。島内の山火事や崩落箇所への造林にも利用され、その実績や花の美しさから、ベネッセアートサイト直島にも導入されました。そして成長の速さ、アレロパシー物質の排出、親元での高発芽率などの植物的特徴により、一部で一種優占の林となっています。根が浅いわりに枝葉が多く頭が重いため、年々倒木の発生頻度が高まっていました。そこで2021年、地域由来の自然な林に更新する目標を掲げ、計画的な伐採とそれに代わる在来種の補植や実生木の保護に取り組み始めました。本プロジェクトで育てた地域苗も利用し、時間をかけて「地」の植生へと還していきます。

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    (左)たわわに花が咲き、雨天時は枝葉が重くなり、幹が倒伏して成長を続ける
    (右)ミモザの林床には草も生えなくなり、土と一緒に種が水下へ運ばれる


  • ユニットタネ

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ユニットタネはランドスケープデザインの設計事務所として、鎌田唯史、鎌田あきこのユニットで1999 年東京多摩地域を拠点に活動開始しました。ランドスケープデザインとは、土地が持つ様相を読み、何を為すべきか、為さざるべきか多元的・総合的に判断する職能と捉えています。そして、自然や人の営みによって育つことのできる「エネルギー」と「寛容さ」の種を蒔けたらと願い、現在も土地ごとの解を見つける活動を続けています。
https://unittane.com/



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