家プロジェクトは直島・本村地区において展開するアートプロジェクトです。「角屋」(1998年)に始まったこのプロジェクトは、現在、「角屋」「南寺」「きんざ」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」の7軒が公開されています。点在していた空き家などを改修し、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものをアーティストが作品化しています。地域に点在する作品は、現在も生活が営まれている本村を散策しながら鑑賞することになります。その過程では、場所の持つ時間の重なりやそこに暮らす人々の営みを感じることでしょう。生活圏の中で繰り広げられる来島者と住民との出会いにより、さまざまなエピソードを生み出しているのもこのプロジェクトの特徴です。都市と地方、若者とお年寄り、住む人と訪れる人とが交流していく中で生まれる新たなコミュニティの在り方を提起する契機になったこの有機的な取り組みは、日々変化しながら進化を続けています。
本村ラウンジ&アーカイブは、かつて農協のスーパーマーケットとして使用されていました。その基本的な構造をほぼ残し、建築家・西沢立衛が空間をデザインしています。家プロジェクトの鑑賞チケットと関連書籍やグッズ販売のほか、インフォメーションセンターとしてご利用いただけます。
「角屋」は家プロジェクトの第1弾として完成しました。200年ほど前に建てられた家屋を、漆喰仕上げ、焼板、本瓦を使った元の姿に修復しました。 宮島達男の作品のうち「Sea of Time '98」では、直島町の人々が制作に参加しています。現代アートが地域や島民の生活に介在する契機にもなった作品です。
宮島達男
1957年東京生まれ、東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。主な展覧会に、1988年ヴェネツィア・ビエンナーレ・アペルト、1996年「ビッグ・タイム」フォートワース近代美術館・テキサス、1997年ヘイワード・ギャラリー・ロンドンを巡回、2008年「Art in You」水戸芸術館・茨城。ベネッセアートサイト直島では、2001年「スタンダード」に参加。
「南寺」は、ジェームズ・タレルの作品のサイズにあわせ、安藤忠雄が設計を担当した新築の建物です。元来この近辺には5つの社寺と城址が集まっており、直島の歴史的、文化的な中心地になっています。「南寺」は、かつてここに実在していたお寺が人々の精神的な拠り所であったという記憶をとどめようとしています。
ジェームズ・タレル
1943年カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。クレアモント大学院芸術修士号取得。主な展覧会に、1980年ホイットニー美術館・ニューヨーク、1995年水戸芸術館・茨城がある。代表作に1979年から今も制作中の「ローデン・クレーター」・アリゾナ、2000年 「光の館」・新潟、地中美術館にて公開されている2004年「アフラム、ペール・ブルー」「オープン・スカイ」「オープン・フィールド」がある。
家プロジェクト「南寺」は、一度にご鑑賞いただける人数が限られる作品であるために、混雑した場合は、本村ラウンジ&アーカイブにて整理券の配付をいたします。
「南寺」整理券について
・整理券には鑑賞いただける時刻が記載されています。
・整理券はお一人様につき、1枚必要です。小さなお子様を含め、人数分をお受け取りください。
・お配りした整理券の記載時刻の10分前に「南寺」にお越しください。
・記載時刻にお越しいただけない場合は、無効になります。記載時刻までは整理券をお持ちいただいたまま島内の他の施設をご鑑賞いただけます。
・整理券の発券、配布は当日のみです。事前の発券、配布はいたしません。
「きんざ」の建物は築百数十年の小さな家屋でした。屋根や柱などの構造はそのままに伝統的な技術を使いつつも、家屋そのものが外壁も含め作品化されています。内藤礼が、すでにそこにあった時間と自然の関係性に、ほんの少し手を加えることによって新たな空間を創出しています。この作品は完全予約制で、おひとりずつ内部に入り作品をご鑑賞いただけます。
内藤礼
1961年広島生まれ、1985年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。主な展覧会・プロジェクトとして、1997年「地上にひとつの場所を」(第47回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館)、「Being Called」(フランクフルト・カルメル会修道院、企画:フランクフルト近代美術館)、2001年「このことを」(家プロジェクト「きんざ」、ベネッセアートサイト直島)、2002年「地上にひとつの場所を/Tokyo 2002」(東京・ライスギャラリーby G2)、2003年「地上にひとつの場所を/New York 2003」(ニューヨーク・ダメリオ・テラス)、2007年「母型」(富山・入善町 下山芸術の森 発電所美術館)、2009年「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」(神奈川・神奈川県立近代美術館 鎌倉)、2014年「信の感情」(東京・東京都庭園美術館)、2017年「信の感情」(パリ日本文化会館)など。
※「きんざ」はメンテナンス作業のため、ウェブ予約の受付を休止しています。
江戸時代から祀られている護王神社の改築にあわせ杉本博司が設計しました。石室と本殿とはガラスの階段で結ばれていて、地下と地上とが一つの世界を形成しています。本殿と拝殿は、伊勢神宮など初期の神社建築の様式を念頭に、さらに作家自身の美意識に基づくものとなっています。
杉本博司
1948年東京生まれ。主な展覧会に、1995~98年「Sugimoto」メトロポリタン美術館・ニューヨーク他巡回、2005年~07年「杉本博司」森美術館・東京他巡回、2008~09年「歴史の歴史」金沢21世紀美術館・石川、国立国際美術館・大阪を巡回。ベネッセアートサイト直島では、1994年「アウト・オブ・バウンズ : 海景の中の現代美術展」1994、2001年「スタンダード」、2006年~07年「直島スタンダード2」に参加。
明治時代、製塩業で栄えていた石橋家の家屋は、2001年4月まで個人宅として使われていました。直島では古くから製塩業が人々の生活を支えており、直島の歴史や文化をとらえるという観点からも、家そのものの再建に重点がおかれました。千住博が着想から5年の歳月を費やして「場のもつ記憶」を空間ごと作品化しています。
千住博
1958年東京生まれ。東京藝術大学大学院博士課程修了。1995年第46回ヴェネツィア・ビエンナーレ絵画部門で優秀賞受賞。代表作に「フラット・ウォーター」シリーズ、「ウォーターフォール」シリーズがある。パブリックコレクションに、2002年大徳寺聚光院別院・ 静岡、2004年羽田空港第2ターミナルビル・東京などがある。2006年~07年「直島スタンダード2」に参加。
「碁会所」という名称は、昔、碁を打つ場所として島の人々が集まっていたことに由来します。建物全体を作品空間として須田悦弘が手がけ、内部には 速水御舟の「名樹散椿」から着想を得てつくられた作品「椿」が展示されています。庭には本物の五色椿が植えられており、室内の須田の椿と対比的な効果をつくりだしています。
須田悦弘
1969年山梨県生まれ。1992年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。主な展覧会に、1993年「銀座雑草論」銀座1-4丁目パーキングエリア、2004年「須田悦弘」パレ・ド・トーキョー・パリ、2006年「須田悦弘展」丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・香川。 ベネッセアートサイト直島では、2001年「スタンダード」、2006年~07年「直島スタンダード2」に参加し、コミッションワークとして2002年「雑草」がある。
かつて歯科医院兼住居であった建物を、大竹伸朗がまるごと作品化しています。家のあるところは彫刻的であり、または絵画的であり、あるいはさまざまなものがスクラップされているなど、多様なスタイルが盛り込まれています。作品タイトルの「舌上夢」という言葉は、何かを口にしている時、味や匂いなどの感覚からたどる夢の記憶のプロセスを表現しています。
大竹伸朗
1955年、東京生まれ。1980年代初頭より国内外で作品発表を開始。近年は、第8回光州ビエンナーレ(2010年、韓国)、ドクメンタ(13)(2012年、ドイツ)、第55回ヴェネチア・ビエンナーレ(2013年、イタリア)などの国際展に参加。ベネッセアートサイト直島での主な作品は、1994年に発表された「シップヤード・ワークス」ほか、家プロジェクト「はいしゃ」≪舌上夢/ボッコン覗≫(2006年、直島)、直島銭湯「I♥︎︎湯」 (2009年、直島)。瀬戸内国際芸術祭2013参加、女木島にて「女根/めこん」を発表。
家プロジェクトでは、午前と午後の1日2回作品鑑賞ツアーを実施しています。 ツアーでは作品の解説に加えて、古くから人々の生活が営まれている地域である本村を散策することで、場所の持つ時間の重なりやそこに暮らす人々の営みを感じていただけます。
家プロジェクトでは、9名以上でご来館の団体のお客様は、スムーズにご鑑賞いただくために事前連絡をお願いしております。
家プロジェクトは、直島・本村地区に点在する作品スペースをめぐりながらご鑑賞いただきます。まずは本村ラウンジ&アーカイブにてチケットをお買い求めください。
(1)バリアフリーについて
古い建物を改修している等の事情から、バリアフリー対応になっていない場所がございます。あらかじめご了承ください。
お越しいただく際は可能な限りの入館サポートをいたしますので、施設へ直接ご相談ください。
(2)車椅子等の貸出について
・車いす:本村ラウンジ&アーカイブで1台、貸し出しを行っています。予約はできません。
・筆談具:あります。
・多目的トイレ:家プロジェクト周辺の本村地区内に3か所あります。
・介助犬・盲導犬・聴導犬を同伴してご入館いただくことができます。
お客様の安全確保およびアート作品、建築作品の保護の観点から、ベネッセアートサイト直島の敷地内における事前許可のない無人飛行機(ドローン)の使用は固く禁止させていただきます。
〒761-3110 香川県香川郡直島町本村地区
Tel : 087-892-3223(ベネッセハウス)
Fax : 087-892-2259
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