五感を使ってアートを体験する
「ベネッセアートサイト直島 バックグラウンドツアー」

「私がここにいることと直接的な関わりをもつ作品をひとつあげるとすれば、瀬戸内海の流木を集めたものだと思います」(1997年5月25日リチャード・ロング1997)

バックグラウンドツアーとは、作品を鑑賞するだけでなく、作品や施設の成り立ちをレクチャーやワークショップを通して知り、ベネッセアートサイト直島での体験をより深めていただけるツアーです。

今回はアーティスト、リチャード・ロングが1997年に制作した作品、「瀬戸内海の流木の円」を中心に企画した「バックグラウンドツアーVol.2」をご紹介します。このツアーでは作品の制作プロセスを追体験いただくお時間も設けました。<知る><みる><作る>という五感を使った体験から、作品を読み解き、深く向き合っていただけるツアーの模様をお伝えします。

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ベネッセハウス ミュージアムでのレクチャーの様子

<知る>

ツアーはベネッセハウス ミュージアム内のレクチャールームにて始まります。冒頭のレクチャーでは、ベネッセアートサイト直島の活動の歴史とともに、貴重なアーカイブ資料を振り返ります。変わらぬ瀬戸内海の自然と、それに調和する建築がどのように設計されたか、ベネッセハウス ミュージアムの構想とコンセプトを学ぶことができます。また、その場所でしか成立しない「サイトスペシフィック・ワーク」としての作品展開の経緯についてもご紹介しています。

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リチャード・ロングの作品をみる様子

昼食もツアーの体験の一つです。ベネッセハウス ミュージアムの地下一階にある「ミュージアムレストラン日本料理 一扇」で召し上がっていただくのは、アーティストの作品をイメージした、この企画のために考案された特製御膳。安藤建築によるコンクリート空間越しに、瀬戸内海の穏やかな海を眺めながらゆっくりお食事していただけます。

空腹を満たした後は、屋外へ。この場所のために制作・設置された屋外の現代アートを間近でご覧いただきながら、琴弾地海岸の海辺を散策します。海岸では、釘の跡が残る風化した板材や、フジツボが住み着いて丸くなった流木など、この後のロングの模擬作品制作ワークショップで使用するお気に入りの流木を探します。ふと瀬戸内海の自然の景観に足を止める方、童心に帰って個性的な素材を収集する方もいらっしゃいました。

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海岸で流木を拾い集める様子

<作る>

再びレクチャールームへ戻った後は、再度リチャード・ロングとその作品についてレクチャーを受け、理解を深めます。そしていよいよ作品の模擬制作へ。スタッフがあらかじめ拾い集めた流木と、自身の拾った流木を各々のペースで配置していきます。円の縁から取り掛かるグループ、軸となるメインの木材を配置しブロックごとに制作を進めるグループなど、自由に作品を作っていきます。「この隙間埋めたいね」と円の中に入って細部まで最終調整をする場面も。アーティストと同じように全体のバランスを考えながら制作をされていたようです。同じ流木という素材を使い、同じプロセスを経ていても、作品それぞれに色が出ていて不思議です。

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レクチャーとワークショップの様子

「高さを出して立体的に見せる工夫をしました」というご家族で参加のお客様、「(自分で作品を作る)前後ですっかり見方が変わったのを実感しました」というリピーターのお客様、「ガイドの案内に耳を傾ける鑑賞ツアーとは一味ちがった体験を楽しめた」というお声もいただきました。

リチャード・ロングの作品には、「自然と人間の関わり」について考えさせるものが多くあります。石や流木、泥など自然のありのままの素材と線や円など幾何学的な形を組み合わせて作られる氏の作品はアーティスト自身が自然に身を置き、歩く体験が原点となっています。「瀬戸内海の流木の円」もロングが滞在中に島を歩き、拾い集めた流木を使って、このベネッセハウス ミュージアムにて制作されました。これらの作品は、直島というこの場所でロングが紡いだ自然との関係の一つのあり方を、作品を通して今も静かに私たちへ語り掛けているのかもしれません。

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リチャード・ロング「瀬戸内海の流木の円」(写真:山本糾)

バックグラウンドツアーでは、知識を得るだけではなく、五感を使って「体験する」ことを大切にしています。作品やアーティスト、そしてベネッセアートサイト直島と皆さまを繋ぐ小さなきっかけとなれば幸いです。ご興味ございましたら、ぜひツアーへのご参加ご検討ください。皆さまのお申込みをお待ちしています。

■ベネッセアートサイト直島 バックグラウンドツアー Vol.2
日程:2022年1月29日(土)、2月9日(水)、2月26日(土)
日帰りツアーはこちらをご覧ください。
ベネッセハウス宿泊付きツアーはこちらをご覧ください。

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