17枚の絵で表現された犬島の自然と人々の暮らし
――「Yellow Flower Dream」
1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録をブログで紹介する「アーカイブより」。今回は犬島「家プロジェクト」A邸で公開されている、ブラジルを代表するアーティスト、ベアトリス・ミリャーゼスによる「Yellow Flower Dream」(2018年)について紹介します。

「Yellow Flower Dream」は、リング状で、17個の花びらのようなカーブがついているA邸の空間の特徴を生かした展示になっています。天井と屋根、床は太陽をイメージした鮮やかな黄色に塗られ、カーブとカーブの間を仕切るように17枚のガラスの板が設置されています。ガラスには様々な模様のカラーシートが貼りあわされており、色鮮やかな作品になっています。
それぞれのガラスには、ポップに抽象化された花や波、葉などの模様にドットなどの幾何学模様を組み合わせた絵が描かれています。これは犬島を訪れたミリャーゼスが島の風景からインスピレーションを得て描きました。
A邸に展示する作品を制作するにあたり、ミリャーゼスは2017年11月に初めて犬島を訪れました。滞在中は島の方々にお会いするとともに、島内を散策し、島の風景にも注目しました。同行したスタッフはミリャーゼスが気に留めた風景を撮影し、彼女の帰国後も異なる季節の写真を送っています。写真には、民家の庭や畑に咲く花、A邸の敷地や周辺に繁茂する木々、ミリャーゼスが島と島を移動する際に目にした海景など、犬島や瀬戸内の生き生きとした姿がおさめられています。







ミリャーゼスは犬島の風景について次のように語っています。
「繊細な花々とともにある緑、地域周辺の野菜畑、海、人々の家並み、すべてがまさに生命である」
色によって犬島のエネルギーを表現できると考えたミリャーゼスは、A邸の周囲にある花の色を作品に取り込み、17枚の絵を構成しました。犬島の自然のなかに見られる幾何形体や人々の暮らしの生命感が大胆な色と形を使った仮想風景として表現されています。

エネルギーあふれる色を用いた「Yellow Flower Dream」は観る人の想像力をかきたてるとともに、透明色の作品の向こう側に見える集落の風景にも気づかせてくれます。訪れる方に作品を通して、犬島の生のエネルギーを感じ取っていただければ幸いです。
参考:
犬島「家プロジェクト」A邸の作品公開を記念した島民お披露目会とワークショップを開催しました。
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