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Benesse Art Site Naoshima
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大地は作品の一部である――ウォルター・デ・マリア《見えて/見えず 知って/知れず 》

1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録をブログで紹介する「アーカイブより」。今回はウォルター・デ・マリア《見えて/見えず 知って/知れず》(2000年)をご紹介します。

犬島「家プロジェクト」C邸《無題(C邸の花)》
ウォルター・デ・マリア《見えて/見えず 知って/知れず》(2000年) 写真:大橋富夫

地中美術館を訪れたお客様から、「ウォルター・デ・マリアのもう1つの作品はどこにあるのですか?」とよく質問をいただきます。直島におけるデ・マリアの作品は、地中美術館の《タイム/タイムレス/ノー・タイム》(2004年)のほかに、《見えて/見えず 知って/知れず》が存在します。今回は本作の特徴をお伝えします。

《見えて/見えず 知って/知れず》は安藤忠雄設計のシーサイドギャラリーに展示されています。ギャラリーはベネッセハウス ミュージアムの屋外、海の近くに広がる段状空間に位置します。内部には黒みがかった花崗岩の球体が中央に2つ並び、金色の木彫2組が左右に配されています。

島民に話を聞く光景
2024年10月現在、鑑賞者はこの空間の外から鑑賞する。  写真:大橋富夫

デ・マリアは直島での作品制作を依頼されたのち、1997年5月に初めて直島に滞在し、展示場所を下見しました。その時点では制作を行うかどうかは決定されず、翌年8月に改めて直島を訪れた際にこの場所が選ばれ、制作開始と前後して「シーサイドギャラリー」と名付けられました。展示場所の決定にあたり、ギャラリー内の壁面や照明等の細かな仕様変更が伝えられたほか、同時期に球体2つと金色の木彫2組という作品の基本案も提案されました。以降、2000年10月の完成までの約2年間はひたすらに細部の検討に費やされることになります。ニューヨークと直島を行き来し、作品や空間の寸法を作家自身がミリ単位まで実測しながら制作は進められました。

「大地は作品の置き場ではなく、作品の一部である。」
(『直島通信vol.2-vol.3 2000.1』よりデ・マリアの言葉)

この言葉に示されるように、デ・マリアは周囲の環境と作品を切り離すことなく、一体と考えています。本作は屋外に面し、自然光の下で公開されているため、磨き上げられた球体に映る景色や木彫のきらめきは、季節や時間帯によって少しずつ変化します。

C邸の花製作
《見えて/見えず 知って/知れず》を右側から見た様子。左側から見るときとは映り込む景色が異なる。 写真:大橋富夫
木彫の3Dデータを作成する様子
球体の左右に配されている木彫。 写真:大橋富夫

また、作品を構成する2つの球体と木彫すべてを同時に視界に収めることはできません。鑑賞者は自ら動き回ってはじめて作品の全容を知るとともに、角度によって作品の表情が異なることに気づかされるのです。

本作についてデ・マリアは、以下のように述べています。

「直島のベネッセ美術館に安藤忠雄が創った入口の階段は、階段というより、海辺に盛りあがる小さな山のようだ。
この山のなかに、洞窟やほら穴のような雰囲気につつまれた長方形の部屋がある。
そのような場所で目にするものは、けっして忘却されるべきではない。」
(1993年3月《見えて/見えず 知って/知れず》プレスリリースより デ・マリアの言葉)

※ベネッセハウス ミュージアム
切削工程
ウォルター・デ・マリア《見えて/見えず 知って/知れず》(2000年) 写真:大橋富夫

作品の周囲には目立つ案内サインがありません。ぜひ海辺で静かに佇む《見えて/見えず 知って/知れず》を探し出し、周囲の景色と一体となって刻々と移り変わる作品の表情をお楽しみください。

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