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Benesse Art Site Naoshima
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犬島の多様な風景を再発見する
――荒神明香《コンタクトレンズ》

1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録をブログで紹介する「アーカイブより」。今回は犬島「家プロジェクト」S邸で公開されている荒神明香の作品《コンタクトレンズ》の制作プロセスをご紹介します。

荒神明香「コンタクトレンズ」
荒神明香《コンタクトレンズ》(2013年) 写真:井上嘉和

《コンタクトレンズ》は透明なアクリルの壁が連なる犬島「家プロジェクト」S邸にて、2013年3月20日に公開されました。大きさや焦点距離の異なる円形レンズに周囲の木々や家々の軒先、小道を通る人々などが形や大きさを変えて映し出され、来訪者に目に見える世界の多様性を示しています。

レンズ越しの風景
レンズを通すと風景が反転したり、拡大したりする様子が見られる。 写真提供:島民・柴田道子さん

荒神が高速バスに乗っている際、車窓の景色が次々と変化していくことを目の当たりにし、自身の目が疑わしくなった経験から着想を得たという《コンタクトレンズ》。これまで屋内では何度か公開されてきましたが、屋外での展示は犬島が初めてでした。

荒神明香《コンタクトレンズ》
荒神明香《コンタクトレンズ》(「建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの"感じ"」展示風景、東京都現代美術館、2011年)撮影:阿野太一 写真提供:東京都現代美術館

犬島に初めて来た時の印象を荒神は「見る場所ごとで、全く違う表情をしている。全貌が把握できず、謎に満ちているところがおもしろい」と語っています。しかし、屋外での展示を構想するにあたり、「海や木々の緑があって、圧倒的な風景の強さに作品が負けてしまわないか、かといって作品の存在感が強すぎると風景に合わないのではないか」と懸念していました。犬島の風景と共生できるような作品に仕上げるため、レンズのサイズ感や配置にこだわって制作が行われました。

レンズ越しの見え方
焦点距離が異なる複数のレンズを展示空間内に持ち込み、レンズ越しの見え方を見極める。

約4,000枚におよぶ円形レンズの配置は、実際のイメージを建物全面に貼り付けて、通りを歩く人々から作品や風景がどのように見えるかを確認しながら決めていきました。

滞在制作の様子
滞在制作の様子。実寸大の配置図を貼り、全体像を捉えながらレンズの量や位置の微調整を繰り返した。

作品公開後、島の方々からは「他の作品には展示替えしないでほしい」と言われるほど愛されるようになり、長い間犬島の集落に溶け込みながら多様な風景を映し出し続けています。夕日が射した時、街灯が反射した時、雨が降った時など、時間帯や天候によっても見え方が変わります。

写真提供:島民・柴田道子さん
写真提供:島民・柴田道子さん
夕日

ぜひ時間帯や天候が異なる時にも足を運んでいただき、様々な表情を見せる犬島の風景の豊かさを感じ取っていただければ幸いです。

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