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Benesse Art Site Naoshima
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犬島「家プロジェクト」A邸の作品公開を記念した島民お披露目会とワークショップを開催しました。

ブラジルを代表するアーティスト、ベアトリス・ミリャーゼスの作品「Yellow Flower Dream(イエロー フラワー ドリーム)」の完成を記念して、作品公開の前日にあたる2018年10月31日に犬島「家プロジェクト」A邸にて、島民に向けたお披露目会とワークショップが開催されました。

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「作品が犬島のみなさまの生活の一部になってほしい」

「Yellow Flower Dream」は、A邸のリング状の建築空間に、様々な模様のシートが貼り合わされた17枚のガラスの板が並ぶ、色鮮やかな作品です。初めて作品を目にした島民たちは、「色がええわ~」「下が黄色やけん、色がキレイに映るな」と口々に感想を語りながら、ギャラリーをのぞき込んでいました。少し離れたところから、印象的な模様を指さしながら「これは波かな?」「あれはアゲハ蝶やろ」と語り合うなど、島の人たちにとってこの新しい作品はさまざまな想像力が掻き立てられる存在になっているようです。

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A邸に集まった18名の島民を前に、「この作品を犬島で作ることができて本当に幸せです」と挨拶したミリャーゼス。彼女は自身の作品集を開いて見せながら、自分のアート活動について紹介しました。

「私は1980年代から35年以上にわたってアーティストとして活動しています。私は元々絵描きであり、今も絵を描くことが私にとって最も重要な表現方法です。90年代の終わりから、絵との関係性を保ちながらも異なる素材を使い始め、表現の可能性を広げてきました。私のアート活動の発想の源になっているのが、ブラジルの文化です。たとえばブラジルの豊かな自然や、バロック様式の建物、ポップカルチャーや民俗的なもの。そういうところからアイデアを得て、作品の色や形に反映させたり、色のコントラストとして表現したりしています」

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A邸に展示する作品を制作するにあたり、2017年11月にミリャーゼスは初めて犬島を訪れました。それまで写真では見ていたものの、実際に足を運ぶとA邸や犬島のイメージがまったく変わったと彼女は振り返ります。

「二つ印象に残ったことがありました。一つは、A邸では家の中に作品だけがあり、住んでいる人たちは家の外にいるということ。二つ目は、このA邸はお花のような形をしていて、建築自体がアート作品、彫刻作品であるように私には感じられたことです。そして、犬島のいろいろなことを知る中で、ベネッセアートサイト直島が犬島でやろうとしていることがこの建築には象徴されていると感じました。単純に作品がこの場所に展示されるというのではなく、みなさまがお住まいの生活の場、コミュニティの中に作品が置かれることによって、作品がみなさまの生活の一部になることができる。それが何より素晴らしいと思いました。私の作品も犬島のみなさまの生活の一部になってほしいと願っています」

「犬島にある日本ならではの繊細な色を作品に取り込んだ」

ミリャーゼスはブラジルのリオ・デ・ジャネイロ出身で、現在もリオ・デ・ジャネイロを拠点にアート活動を行っています。ブラジル最大の都市であるリオ・デ・ジャネイロと、瀬戸内海の小さな島である犬島では、季候も文化も歴史も全く異なりますが、ミリャーゼスは意外にも犬島に深いかかわりを感じていると語ります。

「リオ・デ・ジャネイロにある私のスタジオも、犬島と同じようにとても自然豊かな場所にあり、近くには海もあるんです。私はリオ・デ・ジャネイロと犬島とのかかわりを強く感じていて、A邸ではそれを表現したいと考えました。リオ・デ・ジャネイロには街の近くに植物園があり、自然の鮮やかな色が周りにあります。私はこうした熱帯植物の色から作品の構成を決めることがあるのですが、犬島は日本ならではの繊細な色、微妙な色に溢れています。そこで、この作品ではA邸の周囲にあるお花の色を作品に取り込み、それぞれの絵の構成を決めました」

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「Yellow Flower Dream」は、17枚のガラスの板にそれぞれ異なる絵が描かれています。見る場所や角度、日の光によって違った表情を見せるため、時間や季節によって新しい発見をもたらす作品です。

「光の入り方だけでなく、絵と絵の重なりによっても違って見える作品です。私自身も犬島に滞在している間、いろんな時間にA邸を訪れて、作品がどういう風に変化するのかを見てみたいと思っています。この作品のテーマは、『想像の中の風景』です。想像の世界の風景ですが、それを通して犬島の実際の風景を見ることができます。作品を見てくださる方の想像力を膨らませることができたら嬉しいですね」

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ワークショップを通じて、島民と作品との距離が縮まる

作家による作品の紹介に続いて、島民たちとのワークショップが開かれました。このワークショップでは、実際に作品で使用された透明のカラーシートの端材を使い、B4サイズのプラスティック板にコラージュを作るというもので、ミリャーゼス自身が犬島の島民たちのことを思って構想した企画です。カラーシートの形も、作品に使われているものと同じ形を小さいスケールにしてカットして用意し、島民たちは思い思いの色や形のモチーフを自分のプラスティック板へ配置していきます。

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島民たちはお互いのコラージュを見比べながら、「これは何をイメージしとん?」「何もイメージしとらん」と語ったり、「これにはこっちの色の方が合うんとちゃう?」と色使いを工夫したり、「(カラーシートに)空気が入ってしわしわになってしもた。私の顔と一緒や」と笑ったりと、思い思いにコラージュづくりを楽しんでいました。そんな島民たちを、ミリャーゼスも手伝いながら温かな笑顔を見せています。

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ワークショップが終わると、一人ずつ自分の完成品を手にミリャーゼスと一緒に記念撮影。自分のコラージュを照れ臭そうに見せる島民や、「この色がキレイやから貼ってみたんよ。どう?」と得意満面で話す島民に対して、「色のバランスが良いですね」「重なった色が本当にキレイです」とミリャーゼスは一人ひとり丁寧に感想を伝えていました。自分自身でコラージュを体験してみたことでまた作品の見え方が違ってくるのか、ワークショップ後に改めて「Yellow Flower Dream」をしみじみと眺めている島民も少なくありません。和やかなワークショップを通じて、少しずつ島民と作品との距離、島民と作家との距離が縮まっていったようです。今回、島民たちが制作した18枚のコラージュは1ヶ月にわたって犬島チケットセンターカフェで展示し、その後島民の元に返却されました。

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犬島の自然のなかに見られる幾何学的な形や人びとの暮らしの生命感を、エネルギーあふれる色を用いて仮想風景として表現した「Yellow Flower Dream」。犬島にご来島の際にはぜひ、犬島「家プロジェクト」A邸に足をお運びください。作家の語るように、訪れる時間や季節を変えることで、異なる鑑賞体験を楽しんでいただければ幸いです。

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撮影:井上嘉和

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