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Benesse Art Site Naoshima
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「地中美術館と新たに出合う特別ツアー 1泊2日
バックグラウンドツアーVol.4」レポート

2024年夏、開館20周年を迎えた地中美術館を舞台に「地中美術館と新たに出合う特別ツアー 1泊2日 バックグラウンドツアーVol.4」を実施しました。

バックグラウンドツアーとは、作品を鑑賞するだけでなく、作品や施設の成り立ちをレクチャーやワークショップを通して知り、ベネッセアートサイト直島での体験をより深めていただくプログラムです。

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日程:2024年6月28日(金)~29日(土)、7月12日(金)~13日(土)

地中美術館は、地下にありながら自然光が降り注ぎ、一日を通して、また四季を通して作品や空間の表情が刻々と移り変わります。今回のツアーでは、夜の表情から朝、昼の表情への移り変わりと、普段とは違う特別な空間の中で、新しい地中美術館と出合っていただけるように企画しました。そのツアーの様子をレポートします。

ツアーのはじまりとホテルでの滞在

1日目、夜。まずはジェームズ・タレルのオープンスカイ・ナイトプログラムに参加いただきました。ナイトプログラムでは、暮れていく空と、日没の時間にあわせてジェームズ・タレルが設定した移り行く光を作品の中でお楽しみいただきます。静寂の中でご鑑賞いただくプログラムですので、耳を澄ますと、虫の声や波の音が聴こえてくることもあります。「いつの間にか夜になっていた」と外の変化に驚かれるお客様もいらっしゃいました。

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ジェームズ・タレル「オープン・スカイ」2004 ナイトプログラム(写真:藤塚光政)

夕食は、「Menu Inspiré par Monet」として、モネのレシピをイメージとした特別なメニューをご用意しました。お客様に五感で楽しんでいただけるように、味も見た目も美しい体験になるようにシェフが心を込めて作った、瀬戸内海の旬の食材を使って再現するモネのレシピのフレンチコースです。お客様からは「今回のツアーのためのお料理も作品として記憶に残りました」とのお声をいただきました。

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お客様が宿泊するベネッセハウスのお部屋には、2005年~2006年にかけて実施された連続講演会「地中トーク」の内容を収録した書籍『モネ入門-「睡蓮」を読み解く六つの話』(発行:2006年 財団法人 直島福武美術館財団 地中美術館)、『地中トーク:美を生きる-「世界」と向き合う六つの話』(発行:2006年 財団法人 直島福武美術館財団 地中美術館)を用意しました。この書籍は地中美術館を多様な視点から深めたもので、「地中美術館の『モネ』とは」、「地中美術館の『美』とは」について言及されています。開館当初の連続講演会の内容を通して原点に立ち返ることにより、また新しい地中美術館の見方と出合っていただけたことでしょう。

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地中美術館での特別な体験

2日目の朝は、美術館が開館する前の時間に、スタッフの解説とともにゆっくりと地中美術館を鑑賞いただきました。開館前の「自分たち以外には誰もいない」環境で、いつもの鑑賞とは違った新たな発見をお楽しみいただきました。朝の光が降り注ぐ館内では、見慣れた作品の表情も少し変わって見えます。何度もご来館経験のあるお客様は、これまで作品に抱かれていたイメージからの変化について語られる方もいらっしゃいました。

その後、特別室にご案内し、瀬戸内海の島々の美しい景色をご覧いただきながら、地中美術館の建設に至るまでの経緯や、込められた思いをスタッフがご紹介しました。お茶菓子を楽しみながら、美術館のアーカイブ資料等を閲覧した後は、今回のツアーでご自身が感じたこと、考えたことを文章として残していただき、クロード・モネの描いた『睡蓮の池』(c.1915-26年)をモチーフとしたペンとともにお持ち帰りいただきました。お客様がいつか文章を読み返したときに、地中美術館での鑑賞を思い出すきっかけにしていただければ幸いです。

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施工当時のお話を聞く、建築鑑賞ツアー

その後、ご希望のお客様には「建築鑑賞ツアー」にも参加いただきました。ベネッセアートサイト直島の美術施設の工事に携わり続け、地中美術館の施工を指揮した豊田郁美さんをゲストとしてお招きし、随所に現れる安藤建築の特徴と、それを実現した施工者の挑戦と軌跡を、実際の場所を見ながら解説いただきました。

地中美術館に何十回も訪れたことがある参加者も複数名いらっしゃいましたが、実際に施工に携わった方にお話を伺う機会はこれまで多くなかったため、新たな発見や気付きを得ていただける機会になりました。

特に、船で毎日通いながら職人とともに作り上げた地中美術館に対する豊田さんの思いは、当時から変わらぬ熱量を感じさせるものでした。安藤建築ならではの「グリット」の中にどう収めていくか、「1mm、2mmというか、『究極』をどう捉えるか」、職人とともに考えながら作り上げたとお話されていました。

豊田さんは現在建設中の「直島新美術館」にも携わられています。20年前の施工当時のことを思い出されながらも、地中美術館での経験が、豊島美術館をはじめとするベネッセアートサイト直島の他施設にどのようにつながっていったか、この先、地中美術館をどう保存、維持していくかといった、この先の未来につながるお話もありました。

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建築について解説する豊田郁美さん

お客様の声

ご参加されたお客様の声を紹介します。

■バックグラウンドツアー

最もよかったのは早朝ツアーです。説明も少なすぎず、多過ぎず強制になってしまうこともなく、自由に感じられるよう配慮いただきました。良く勉強されていて感心しました。最高のロケーションでとびきりの時間を過ごすことができました。
朝、他のゲストがいない静かな時間は、かけがえのない素敵なひとときだった。解説をよくうかがえてよかった。
オープンフィールド。普段は限られた時間での鑑賞ですが長時間居る事でいつもとは違う見え方であったり作者の作品への意図が少し理解(?)できそうな気がしました。デマリアやモネも変わらず、良いです。
開館前の無人の時間だったため、中庭の見え方、感じ方は今までと違い楽しかった。ツアー最後の部屋も景観も良く、良い思い出になった。

■建築鑑賞ツアー

構造物としてとても面白いが、そうみえるようにした理由や建て方がわかってとても楽しかった。
作ったときの気持ちや、職人さんとのやりとりが聞けてよかった。
建築秘話が聞けた。また講師の方がとてもおもしろく続きが聞きたかったです。時間が短くかんじた。

おわりに

開館当初、福武總一郎(現・福武財団名誉理事長)は下記のようなコメントを残しています。

地中美術館をつくろうと思ったとき、私は「1000年後にも残るものを」と考えました。いつの時代でも人間にとって欠かせないのは、自然との交歓です。その時代、人間一人ひとりに対して強いメッセージを発するアート、それをつくりだせるのは、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルであり、そしてクロード・モネである。そのための空間を設計できるのは安藤忠雄であると確信し、彼らとの対話を進めてきました。

瀬戸内の静かな自然の発するリズムとその場に最もふさわしいアートと空間の中で人間の知性、感性の刺激を体感する。また、この美術館に身を置く方々が自分が生きている、生かされているという祝福感の中で「よく生きる(Benesse)とはどういうことか」を考えていただくと同時に日本人が本来持つ精神性を感じていただければ、これ以上の喜びはありません。

(開館当時の地中美術館プレスリリースから一部抜粋、当時は直島福武美術財団の理事長としてのコメント)

地中美術館が歩んできた20年は、長い歴史の中ではほんの僅かな時間かもしれません。しかし、その時間の中でも、地中美術館を取り巻く環境や社会は大きく変化を続けています。時代に合わせて成長を続けながらも、一方で変わらない思いを鑑賞空間として提供し続けることができるよう、我々運営スタッフ一同も努めてまいります。

地中美術館は、訪れていただく時間帯、天気、季節、またお客様ご自身の変化により、様々な表情に出合える空間です。初めての方も、お久しぶりの方も、ぜひ機会があれば足をお運びください。皆様のご来館を心よりお待ちしています。

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