直島町民とアートが密接にふれあう「町民感謝祭 2021」レポート

ベネッセアートサイト直島では、2021年11月22日(月)に直島町民限定で「町民感謝祭 2021」を開催しました。日頃よりベネッセアートサイト直島の活動へのご理解・ご協力をいただいている直島町民の皆様に感謝を込めて、直島の各アート施設での作品鑑賞や参加型イベントなど、各施設ならではのプログラムをお楽しみいただくことで、アートを軸とした活気ある直島の一日を創出することを目的としています。

blog20211230_01.JPG

地域の方々に向けたツアーやガイドなどの取り組みは、2015年よりさまざまな形で実施してきました。町民感謝祭は、2020年はコロナの影響により中止となりましたが、今回はようやく実施することができました。当日はあいにくの雨でしたが、各プログラムにお越しいただいた町民の方々には普段とはちがうアートとのふれあい、アートを介した語らいを楽しんでいただけました。

blog20211230_02.JPG

ワークショップ「秋深み 川柳を詠もう 李禹煥」

李禹煥美術館では、町民が選んだ作品の1つをじっくりと鑑賞し、それぞれの人々が感じたことや気づいたことを「キーワード」として自由に出し合い、それを素とした川柳・俳句をつくるワークショップ「秋深み 川柳を詠もう 李禹煥」というプログラムが開催されました。

blog20211230_06.JPG

朝いちばんの回の参加者は6名、なかには40年以上の歴史を持つ俳誌『草』に籍を置く森井照穂さんもご参加くださいました。森井さんは直島に住んで40年、「李禹煥美術館にはこれまで何度も、それこそ10回以上は訪れています」とおっしゃるほど直島の各アート施設に親しみ、誇りに思ってくださっています。2021年11月の『草』には次のような句が掲載されています。

「麗しき 秋蝶来てをり 島アート」

今回選ばれたアート作品は『点より』。スタッフからの「みなさんは何に見えますか?」という質問に、森井さんは「輪廻転生」とう言葉を真っ先にこたえてくださいました。「輪廻転生!いいですね!」というスタッフの声に勇気づけられ、他の参加者の方も「太陽」「はじめと終わり」「だんだん消えていくから月蝕」と意見交換が進みます。

アート作品を中心に人々が意見を交わすことで、一人では見えなかった新しい視点が次々に生まれ、作品を見る心も柔らかくなっていくようです。「川柳・俳句」制作では森井さんは意欲的に2種披露してくださいました。

「輪廻転生 濃きもうすきも 皆仲間」

「満月や 満ち欠けのある 大宇宙」
blog20211230_04.JPG

「俳句は、自分の"見たまま""見えたまま"を描くことが重要なことなのですが、今回の鑑賞体験でもスタッフの方からは"自分の見たままをおっしゃってください"と言ってくださいました。目の前にあるものをいかに突き詰めるかという点で句作と似ていますね」と森井さん。アート鑑賞と俳句づくりとの意外な共通点を教えていただきました。

その森井さんの励ましを受け、

「李禹煥 内側に見る 月蝕か」

という句をつくってくださったのがゆきこさん。参加者のなかでただ一人「初めて李禹煥美術館を訪れた」という方です。直島で生まれ育ったゆきこさんは成人後大阪に移り、3年前直島に戻ってこられました。

「わたしはアート施設が好きで、大阪でも安藤忠雄さんの建築は『住吉の長屋』や『光の教会』、『兵庫県立こどもの館』まで行きましたが、この李禹煥美術館がいちばん忘れがたい場所になると思います」

その理由は「川柳づくりなんて難しいことやらされたんだもの。でも1つ作ると、また別のものが頭に浮かぶからおもしろいですね。もう一度ここ(李禹煥美術館)に来てみて、ひとりでゆっくり考えてみようかしら」

ゆきこさんにとって幼い頃過ごした直島とはすっかり変わってしまったそうですが、この「町民感謝祭」を通して、新しい直島にも忘れがたい思い出の場所ができたようです。

blog20211230_05.JPG

直島の町民とアートが密接にふれあえる特別な一日

ほかにも「瀬戸内『鍰造景』資料館 特別開館」や「直島銭湯『I♥湯』季節湯 無料開館」などの特別開館や、「ホテル見学ツアー」や「本村アートさんぽ」「ベネッセハウス スパ見学」「地中美術館鑑賞ツアー」「オリジナルキーホルダー作り」などの多くのイベントなど、計7施設14プログラムが実施された「町民感謝祭」。直島の町民とアートが密接にふれあえる特別な一日になりました。

blog20211230_11.JPG
夜22時まで開かれた「瀬戸内『鍰造景』資料館 特別開館」
blog20211230_12.JPG
直島で採れた植物のみを使った「直島銭湯『I♥湯』季節湯 無料開館」
blog20211230_09.JPG
いくつかの植物から好みのあった季節湯を楽しむ「『I♥湯』季節湯ワークショップ」
blog20211230_13.JPG
本村地区を散策しながら家プロジェクトを巡ったり、昔の思い出を語り合う「本村アートさんぽ」
blog20211230_07.JPG
ベネッセハウス パークのアートスペースを巡りながらパーク・ビーチのスイートルームをご案内する「ホテル見学ツアー」
blog20211230_14.JPG
ベネッセハウス パーク棟内のアートを鑑賞後、印象に残った色やイメージを元にキーホルダーを作成する「廃材を使って、自分だけのオリジナル アクリルキーホルダーを作ろう!」
blog20211230_08.JPG
実際にトリートメントで使用するアロマオイルの香りをお試しいただく「ベネッセハウス スパ見学 ―アロマの香り体験―」
blog20211230_15.JPG
美術館スタッフがご案内する特別ツアー「地中美術館鑑賞ツアー」
blog20211230_17.JPG
セロファンや折り紙を使い、瀬戸内海を背景にした大きな絵をみんなで作る「地中美術館 直島の大装飾画を作ろう」
blog20211230_10.JPG
ベネッセアートサイト直島のオリジナルグッズが当たる「BASN景品くじ」

同じカテゴリの記事

「嵐のあとで」~「ストーム・ハウス」感謝会~<br>作品が巻き起こした豊島での軌跡

2022.01.10

「嵐のあとで」~「ストーム・ハウス」感謝会~
作品が巻き起こした豊島での軌跡

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーによる「ストーム・ハウス」は、...

続きを読む
豊島での「出会い」や「記憶」を形に。<br>『<ruby><rb>針貼工場</rb><rt>はりはるこうば</rt></ruby>』コラージュワークショップのレポート

2021.11.18

豊島での「出会い」や「記憶」を形に。
針貼工場はりはるこうば』コラージュワークショップのレポート

豊島の針工場では、2021年8月~11月までの開館時間に、お子様から大人まで楽し...

続きを読む
直島の子どものための鑑賞プログラム<br>「ヒミツを一緒にさがそう」レポート

2021.09.06

直島の子どものための鑑賞プログラム
「ヒミツを一緒にさがそう」レポート

地中美術館では、2021年6月に美術館を貸し切って、直島在住のご家族をお招きし、...

続きを読む
豊島美術館 0歳~6歳のための<br>親子鑑賞プログラム レポート

2020.10.21

豊島美術館 0歳~6歳のための
親子鑑賞プログラム レポート

豊島美術館では、開館前の美術館を貸し切り、小さなお子さまと一緒にご家族でゆっくりと鑑賞していた…

続きを読む
「今、瀬戸内から宇沢弘文<br>~自然・アートから考える社会的共通資本~」レポート

2020.09.29

「今、瀬戸内から宇沢弘文
~自然・アートから考える社会的共通資本~」レポート

オンラインフォーラム「今、瀬戸内から宇沢弘文~自然・アートから考える社会的共通資本~」が、20…

続きを読む
小学生対象の「カイコのまゆ 草木ぞめワークショップ」を豊島八百万ラボで行いました

2019.12.06

小学生対象の「カイコのまゆ 草木ぞめワークショップ」を豊島八百万ラボで行いました

豊島八百万ラボでは、瀬戸内国際芸術祭2019の夏会期の間、毎週土曜日に小学生を対象とした夏休み…

続きを読む

カテゴリ検索