アーカイブ・シリーズ 第10回
安藤忠雄氏の設計による
「ベネッセハウス ミュージアム」

1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録をブログで紹介する「アーカイブ・シリーズ」。第10回は、ベネッセハウス ミュージアム(1992年)を紹介します。

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ベネッセハウス ミュージアム 撮影:山本糾

ベネッセハウス ミュージアムは、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、美術館とホテルが一体となった施設として1992年に開館しました。瀬戸内海を望む高台に建ち、大きな開口部から島の自然を内部へと導き入れる構造の建物は、安藤忠雄氏の設計によるものです。

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福武書店社長(当時)の福武總一郎(左)と安藤忠雄氏(右)(提供:鹿島建設)

ベネッセハウスは、ベネッセホールディングス(当時 福武書店)が1988年から「人と文化を育てる」をテーマに直島で取り組んできた「直島文化村構想」のなかで建設され、開館しました。同構想の一環として1989年にオープンした「直島国際キャンプ場」を監修した安藤忠雄氏に設計を依頼し、施主、設計者、施工業者による度重なる議論とアイディアの出し合いを経て実現に至りました。

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(左)ベネッセハウス ミュージアムのエントランス 撮影:市川かおり
(右)ベネッセハウス ミュージアム天井の丸い天窓 撮影:松岡満男
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ベネッセハウス 地下1階のギャラリー(撮影当時) 撮影:山本糾

ベネッセハウスの周辺は瀬戸内海国立公園に指定されている自然が残るエリアでした。ベネッセハウスの建設にあたっては、美しい瀬戸内の風景を主役に、まわりの景観を活かしていくことが念頭に置かれました。安藤氏は土地を目にした際に「建築をすべて地中に埋め込みたい」と感じたといいます。

安藤氏は斜面地の傾斜を活かして建築の半分を地中に埋めることで、瀬戸内の景観を壊さず、建築の内側からは海への視界が開ける配置を実現しました。地下1階、地上3階の建築は、随所に設けられた大きな開口部や、各階を大胆につなぐスロープにより、瀬戸内の景観を内部に取り込み、多様な視覚体験を見る人に促します。

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杉本博司"タイム・エクスポーズド" 撮影:安斎重男
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リチャード・ロング"瀬戸内海の流木の円"/"瀬戸内海のエイヴォン川の泥の環" 撮影:山本糾

ベネッセハウスには、絵画、彫刻、写真、インスタレーションなどの収蔵作品の展示に加え、アーティストたちがこの場所のために制作したサイトスペシフィック・ワークが恒久設置されています。この手法は、強い個性をもった建築空間に作品が負けることなく成立するためにベネッセアートサイト直島がとった方針でもありました。アーティストたちは直島の自然はもちろん、建築に触発され、ここにしかない作品を制作しました。自然とアートと建築が融合し稀有な場をつくるという手法は、ベネッセハウスがなければ生み出されなかったといえるでしょう。

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ベネッセハウス ミュージアムから瀬戸内海を望む 撮影:鈴木研一

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