ベネッセアートサイト直島 Benesse Art Site Naoshima

ナビゲーション

アーカイブ・シリーズ 第8回
宮島達男「角屋」"Sea of Time '98 "

1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録を振り返る「アーカイブ・シリーズ」。第8回は、1998年に公開され、2018年に20周年を迎えた、宮島達男氏による家プロジェクト「角屋」 "Sea of Time '98 "について紹介します。

blog20201009_01.jpg
1998年2月、"Sea of Time '98 " 制作中の宮島氏 撮影:上野則宏

「角屋」は直島・本村地区で、家プロジェクトの第一弾として公開されました。200年ほど前に建てられた家屋を、漆喰仕上げ、焼き板、本瓦を使った姿に修復し、空間そのものを作品化しています。「角屋」に展示されている宮島氏の3作品のうち"Sea of Time '98 "では、直島の方々が制作に参加しています。

本作品には、125個のLED製のデジタルカウンターが使用されており、ほの暗い日本家屋内に設置されたプールの中にランダムに配置されています。それぞれのデジタルカウンターは、1から9までの数字を順に表示しますが、宮島氏はカウントするスピード(時を刻む速さ)を島民に委ねました。スピードを決める「タイムセッティング会」が1998年2月に開かれ、直島の5歳から95歳までの島民125名が参加し、思い思いのスピードに設定しました。

カウンターはあらかじめ宮島氏が作成した配置図に基づいて設置され、1998年3月に作品が公開されました。参加した島民からは後に、「『角屋』は私に元気を与えてくれたと思います」、「私にとって『角屋』は、この作品が生きる限り、自分も生きてやろうかと希望の湧く場所」といった声を聞くようになり、「角屋」はベネッセアートサイト直島の活動において、現代アートが地域や島民の生活に介在する契機になった作品といえます。

blog20201009_02.jpg
(左)デジタルカウンターの配置を検討する宮島 撮影:上野則宏
(中央)1998年2月15日に実施された「タイムセッティング会」 撮影:上野則宏
(右)デジタルカウンター 撮影:上野則宏

2018年には公開から20年を迎え、あらためて1998年のタイムセッティングに参加された125名の方々に集まっていただき、2018年における「時の速さ」を作品に吹き込んでいただく「タイムセッティング2018〜継承〜」を企画・実施しました。1998年の参加者125名全員の所在を調べ、ご本人や、故人となられたことが分かった場合には血縁者の方々に、20年ぶりの「タイムセッティング会」を予定していることをお伝えしました。

会には、20年前と同様にご本人が参加される場合もあれば、子供や孫などの身近な方に機会を譲られた方、新規の公募枠に選ばれた、直島に転入した若い世代の方など、多様な層が参加しました。参加者の一人である堀口容子さんは「参加できたことが自分の誇りとなっています。もし、私が亡くなっても、そこでずっと生き続けるという思いが、子や孫、ひ孫に伝わっていけばいいなと思っています」と語られています。

blog20201009_03.jpg
(左)2019年2月8日に行われたトークイベント
(右3点)「タイムセッティング2018~継承~」の参加者。左から堀口容子さん、福島真希さん、中根清孝さん

今回のタイムセッティングが実施されるなか、「次のタイムセッティングの際には...」という声も聞こえてきました。これから先の20年後も作品が存在し続けるというイメージがそれぞれの心のうちにあるということかもしれません。

「角屋」は「タイムセッティング2018〜継承〜」という試みを通して、一つの場所に在り続け、時間というものを作品のうちに取り込みながら、コミュニティの中で生き続けようとしています。

blog20201009_04.jpg
宮島達男 家プロジェクト「角屋」"Sea of Time '98" 撮影:鈴木研一

「タイムセッティング2018〜継承〜」についてはベネッセアートサイト直島広報誌 2019年7月号 P2-15でもご紹介しています。

ブログ記事ー一覧

寄稿「あの空気を吸いに行く」鈴木芳雄
寄稿

2021.01.18

寄稿「あの空気を吸いに行く」鈴木芳雄

直島に初めて行ったときのことを思い出してみる。杉本博司さんの護王神社が完成して、そのお披露目と神社への奉納能「屋島」を見に行ったときだ。2002年。かれこれ20年か。記事を読む

寄稿「bene(よく)+ esse(生きる)を考える場所」神藤 秀人
寄稿

2021.01.15

寄稿「bene(よく)+ esse(生きる)を考える場所」神藤 秀人

「"よく生きる"とは何かを考える場所」は、決して「一人称」でないだろう。島のため、島の人のため、島に来る人のために、必要な場所なのだ。はっきりとした目的があり、そこに向けて成長してきた「ベネッセアートサイト直島」は、世界中の全ての人に、生きることの素晴らしさを伝える活動である。そして、それは今の香川県の「らしさ」の根元でもあり、日本を代表する"デザイン"だと僕は思う。記事を読む

島の暮らしとともに

2021.01.13

島の暮らしとともに

今年90歳を迎える直島町民の田中春樹さんは、1990年代からベネッセアートサイト直島の活動に関わってくださっています。今回の記事では、約30年に渡るベネッセアートサイト直島でのエピソードについて田中さんに振り返っていただきました。記事を読む

寄稿「感じるためのレッスン」島貫 泰介
寄稿

2021.01.06

寄稿「感じるためのレッスン」島貫 泰介

じつを言えば、私が直島にやってきたのは今回が初めてなのだ。そう告白すると、アートに興味のあるほとんどの人は驚く。私もまさかこれまで一度も来る機会を持たず、初の来島がコロナ禍で揺れるこの2020年になるとは思ってもいなかったのだから同感だ。だがこのタイミングで来れたことは恩寵だったと思う。記事を読む

ベネッセハウス お客様の声(2020年11月)

2020.12.24

ベネッセハウス お客様の声(2020年11月)

年の瀬も近づき直島は一段と寒さを増してきました。ベネッセハウスには、旅行客で賑わう春・夏ではなく、冬を選んでお越しくださるお客様がたくさんいらっしゃいます。今月も2020年11月にご宿泊いただいたホテルゲストの方からの感想の一部をご紹介します。記事を読む

寄稿「二つの出あい、島々で」大西 若人
寄稿

2020.12.21

寄稿「二つの出あい、島々で」大西 若人

人やモノとの出あいには、2種類ある。新鮮な出あいと、懐かしい出あいだ。 今という時代を鮮やかに切り取る現代美術を見る場合、当然のことながら、前者が多い。誰もが、新鮮な出あいを求めて、現代美術を見にゆくといってもいい。 ただ、例外もある。「大地の芸術祭」や「瀬戸内国際芸術祭」といった里山や島々で開催される芸術祭もその一つといえるだろう。記事を読む

メッセージ
アクセス
アート
宿泊
お問い合わせ
プレス
教育プログラム