島民と作り上げるアート――宮島達男「角屋」"Sea of Time '98 "

1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録を振り返る「アーカイブ・シリーズ」。第8回は、1998年に公開され、2018年に20周年を迎えた、宮島達男氏による家プロジェクト「角屋」 "Sea of Time '98 "について紹介します。

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1998年2月、"Sea of Time '98 " 制作中の宮島氏 撮影:上野則宏

「角屋」は直島・本村地区で、家プロジェクトの第一弾として公開されました。200年ほど前に建てられた家屋を、漆喰仕上げ、焼き板、本瓦を使った姿に修復し、空間そのものを作品化しています。「角屋」に展示されている宮島氏の3作品のうち"Sea of Time '98 "では、直島の方々が制作に参加しています。

本作品には、125個のLED製のデジタルカウンターが使用されており、ほの暗い日本家屋内に設置されたプールの中にランダムに配置されています。それぞれのデジタルカウンターは、1から9までの数字を順に表示しますが、宮島氏はカウントするスピード(時を刻む速さ)を島民に委ねました。スピードを決める「タイムセッティング会」が1998年2月に開かれ、直島の5歳から95歳までの島民125名が参加し、思い思いのスピードに設定しました。

カウンターはあらかじめ宮島氏が作成した配置図に基づいて設置され、1998年3月に作品が公開されました。参加した島民からは後に、「『角屋』は私に元気を与えてくれたと思います」、「私にとって『角屋』は、この作品が生きる限り、自分も生きてやろうかと希望の湧く場所」といった声を聞くようになり、「角屋」はベネッセアートサイト直島の活動において、現代アートが地域や島民の生活に介在する契機になった作品といえます。

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(左)デジタルカウンターの配置を検討する宮島 撮影:上野則宏
(中央)1998年2月15日に実施された「タイムセッティング会」 撮影:上野則宏
(右)デジタルカウンター 撮影:上野則宏

2018年には公開から20年を迎え、あらためて1998年のタイムセッティングに参加された125名の方々に集まっていただき、2018年における「時の速さ」を作品に吹き込んでいただく「タイムセッティング2018〜継承〜」を企画・実施しました。1998年の参加者125名全員の所在を調べ、ご本人や、故人となられたことが分かった場合には血縁者の方々に、20年ぶりの「タイムセッティング会」を予定していることをお伝えしました。

会には、20年前と同様にご本人が参加される場合もあれば、子供や孫などの身近な方に機会を譲られた方、新規の公募枠に選ばれた、直島に転入した若い世代の方など、多様な層が参加しました。参加者の一人である堀口容子さんは「参加できたことが自分の誇りとなっています。もし、私が亡くなっても、そこでずっと生き続けるという思いが、子や孫、ひ孫に伝わっていけばいいなと思っています」と語られています。

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(左)2019年2月8日に行われたトークイベント
(右3点)「タイムセッティング2018~継承~」の参加者。左から堀口容子さん、福島真希さん、中根清孝さん

今回のタイムセッティングが実施されるなか、「次のタイムセッティングの際には...」という声も聞こえてきました。これから先の20年後も作品が存在し続けるというイメージがそれぞれの心のうちにあるということかもしれません。

「角屋」は「タイムセッティング2018〜継承〜」という試みを通して、一つの場所に在り続け、時間というものを作品のうちに取り込みながら、コミュニティの中で生き続けようとしています。

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宮島達男 家プロジェクト「角屋」"Sea of Time '98" 撮影:鈴木研一

「タイムセッティング2018〜継承〜」についてはベネッセアートサイト直島広報誌 2019年7月号 P2-15でもご紹介しています。

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