来島者へのおもてなしの一杯。片瀬和夫 「茶のめ」
1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録を振り返る「アーカイブ・シリーズ」。第3回は、片瀬和夫氏による「茶のめ」(1987/1994年)を紹介します。
「茶のめ」は、1994年の「Open Air '94 "Out of Bounds" ―海景の中の現代美術展」で公開されました。禅僧の仙厓の言葉「これ食ふて茶のめ」にヒントを得た作品で、禅問答のようにも、アートへ気楽に向き合うことを促しているようにも取れます。ベネッセハウス下の桟橋(現在は使用中止)から来島した方が最初に出合う作品でもあり、訪れた人へお茶をすすめるという側面もありました。
作品の設置場所として意識されたのは、180度の海が拡がり桟橋を見下ろすことができるというロケーションだけではありません。作品の土台の対角線が桟橋と平行になるように、また土台の一辺が安藤忠雄氏設計の建築の一辺の延長線と一致するように、周囲の建築物との関係まで併せて、片瀬氏によって決められました。
現在もベネッセアートサイト直島の活動における重要なキーワードとなっている「自然」と「建築」と「アート」の関係を強く意識して制作されたこの作品は、展覧会期中に、その後も継続して設置することに決まりました。桟橋が滅多に使用されなくなった今では、来島して最初にこの作品に出合うという方は少なくなりましたが、25年以上も変わらず訪れる人々へお茶をすすめ迎え入れています。
「茶のめ」については、ベネッセアートサイト直島広報誌 2019年4月号(P16~18)でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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