直島の空を象が飛んだ日――大竹伸朗 直島銭湯「I♥湯」

1980年代から活動するベネッセアートサイト直島の記録を振り返る「アーカイブ・シリーズ」。第2回は、2009年7月にオープンした大竹伸朗氏の「直島銭湯『I♥湯(アイラヴユ)』」にまつわるエピソードを紹介します。

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浴室にある象のオブジェは、直島の上空をクレーンで移動して設置された

実際に入浴できるアート施設、直島銭湯「I♥湯」には、大竹氏によって日本各地から集められた様々なオブジェが、建物の内にも外にもコラージュされています。上の写真は、中でも特に存在感の大きい象のオブジェが銭湯に設置された時の様子です。

この象は元々、北海道・定山渓の秘宝館に展示されていたもので、定山渓の「定」の字をとって「定子(サダコ)」と呼ばれています。直島銭湯のプロジェクトが始まる10年以上も前、大竹氏は北海道を旅した際にサダコと出合い、生きているような象の姿に当時から惹かれていました。プロジェクトの進行中に秘宝館閉館の知らせがあり、サダコと再会した大竹氏は直島銭湯へ置くことを決めます。配置については、入口など様々な案が検討された結果、男湯からも女湯からも見える浴室中央の隔壁の上に定まりました。2009年6月、サダコはクレーンに吊るされ空高く浮かび、銭湯の天井部を通って現在の位置へ降り立ちました。

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入浴できるアート作品として、島民の活力源となり、国内外からの来島者と島民とが交流できる場にしたい、そのためには島民や来島者が銭湯に親しみをもてるような、誰にでも分かりやすいものが必要である――象のサダコが設置された背景にはそんな大竹氏の想いがありました。子供にも分かりやすく親みやすい象のサダコの存在が、直島銭湯「I♥湯」で生まれ育まれる様々な交流につながっているのです。

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直島銭湯「I♥︎湯」内観(写真:井上嘉和)

直島銭湯「I♥︎湯」については、ベネッセアートサイト直島広報誌 2018年10月号でも特集しています。ぜひご覧ください。

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