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直島コメづくりプロジェクト―今私たちが感じること―

2006年から発足した直島コメづくりプロジェクトは「直島の稲作を復活させ、かつてのコメづくりを基盤に成立した島(日本)の日常生活を現代の目から見つめなおす」という思いから始まりました。今回は長い歴史の中多くの人が関わってきたコメづくりに対して、今私たちが感じることを発信したいと思います。

直島のつむうら地区は、かつて積浦千軒といわれ田んぼが一面に広がる土地でした。米づくりはたくさんの人の手によって行われ、その時代に生きた人たちによって繋がれてきました。夏のまだ青い稲が、生き生きと育つ田んぼの風景を眺めていると、今はもう目には見えない先人たちの息遣いを感じ、心が温かくなります。

例えば、直島の田んぼには雑草が生えやすく、7月から8月にかけて除草作業を行います。夏の暑い日差しの中のこの作業は、毎年たくさんの人の手を借りながら行っています。昔は炎天下の中の草取りを家族総出で行っていたといいます。そして草取りが終わると「トリアゲ」といって、仕事を休み、田植えを手伝ってくれた親戚や知人に団子を配ったそうです。米づくりは人と人が繋がる大切な場所で、多くの人がこの田んぼを行き来していた風景が目に浮かんできます。

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草抜きをする様子

また、直島ではその昔「ノマワリ」といって子どもたちが中心となって神輿をかつぎ、神職や農家の人たちとともに田畑の間を行列となって歩く様子が見られたそうです。神輿は隣の島に渡り、最後には海に落とし込まれました。そして八幡神社でお神酒やおにぎりの接待がありました。(直島町史より)今なお残っている直島のお祭りのように、たくさんの島の人が田んぼに集まり楽しく神輿をかついでいたことを想像すると、米づくりと人の暮らしの関係の深さを感じます。

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夏の積浦地区の田んぼの風景

このように長い間、その時代に生きた人たちによって「コメづくり」は行われてきました。私たちが当たり前のように目にする田んぼの風景は、先祖たちが生きてきた、とても尊い場所のように感じます。

しかし、そんな美しい田んぼの風景も一度は直島から消えかけた時があります。 一度人の手から離れてしまった土地は、かつての面影もないほどに雑草や木が生える、耕作放棄地になってしまいました。コメづくりプロジェクト発足時、私たちはそんな土地で「0からコメづくりを復活させる」と思っていました。しかし耕作放棄地になってしまった積浦の田んぼには、何百、何千と繰り返されてきた先人たちの稲作の痕跡が残っていたのです。例えば直島に多く見られるため池やそこから繋がる水路、水が溜まる田んぼ。直島は大きな山がなく、また水を引く川もありませんが、ため池を使い水路を作り、田んぼへと水を送る工夫を行ってきました。田んぼの周りの水路には、一つの田んぼに水が入ってから違う田んぼに水が行くような複雑な形をしている所もあります。小さなことですが、先人たちが、試行錯誤しながらこの水路を作ったことが垣間見える気がします。私たちは当たり前のようにため池から田んぼへ水を送り、お米を育てていますが、長い時間の中で沢山の苦労があって今があることを改めて感じています。

「コメづくり」は繰り返し人の手で繋がれています。「私たちは誰かが暮らし、『コメづくり』をしてきた上に生きている」。田んぼで作業しながらそんなことを想像していると、先人たちの息遣いが聞こえて、「愛しいな」という思いで胸が熱くなります。私たちはそんなたくさんの人がここで暮らし、生きてきた証である「コメづくり」を残していきたいと思っています。

参考文献
直島町史編纂委員会(1990)「直島町史 続編」 直島町役場

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