ベネッセアートサイト直島 Benesse Art Site Naoshima

ナビゲーション

直島コメづくりプロジェクト連載 ―2
これまでの歩み

直島コメづくりプロジェクトは、直島町積浦地区に広がる休耕田・積浦田園を舞台としたアートプロジェクトです。2006年に行われた展覧会「直島スタンダード 2」に関連して企画し、荒れ果てた土地を再び耕し始め、途絶えつつあった直島のコメづくりを復活させました。

町役場や家プロジェクトなどがある本村地区から、つつじ荘やベネッセハウスのある島の南東部へ抜ける県道沿いに、私たちの耕す田んぼはあります。このあたりは、かつて"積浦千軒"と呼ばれ、島の一大穀倉地帯でした。しかし、暮らしの変化や高齢化など様々な要因が重なり、1970年ごろを境に、その多くが耕作放棄地となっていきました。プロジェクトが始まる頃には、大人の背丈をゆうに超える雑草が生い茂り、大きな木まで生えているような土地となっていました。

kome_2_2.jpg
プロジェクト発足当初の積浦田園の様子。荒廃していた田の草を刈る作業からプロジェクトは始まった

「日常を支える生活基盤を『文化』の視点から見直し、芸術活動によって再構築していく」という「直島スタンダード 2」のコンセプトのもと、目の前に広がる耕作放棄地を開墾し、作物を育てることで、私たちの足元を支える土地、大地というものをもう一度考える――。それこそが本質的な創造行為となるのではないかと考え、ベネッセアートサイト直島のプロジェクトとして、福武財団が主催するかたちで、このプロジェクトは始まりました。

しかし、私たちがコメづくりに取り組むその道のりは、出だしから困難の連続。農家でない組織が土地を借りることは当時の法制度では制限されており、何よりも荒れ地を切り開き、作物を栽培管理していくとなるとハードルはなお一層高いものです。土地をお借りした地主さんからは「できんと思うよ」と心配されつつも、2006年は3反の田んぼに苗を植えるところから始まりました。地主さんは、しばらくコメづくりからは離れていたから教えられることがあるだろうかと言いつつも、体が覚えているとノウハウの一つ一つを授けてくださったり、昔使っていた機械も貸していただいたりと、地域の方が見守り支えてくださったことは大変心強いことでした。

ぜひ続けてほしいという地域の皆さんからの後押しもあり、2年目以降も継続してコメづくりに励むことに。次第に耕作面積を拡大し、お米の食味もだんだんと改善していきました。2009年には販売も開始し、島内の飲食店ではこのお米と、それに加えてのちに開墾した畑で採れた野菜の提供も始めました。安定して収穫できるようになった後は、面積拡大による負担の増大や島内流通のやりくりに苦心したり、スタッフの入れ替わりにより技術技能が継承しづらいなど、続けていくことにおいては発足当初とはまた違った苦労があります。しかし、効率とは別のところに価値を見出してきたからこそ、ベネッセアートサイト直島の中の重要な活動として捉え、活動を続けてきた経緯があります。

小出来でもいいから、ずっと続けてほしい――。そう島の人は仰います。積浦の田園は、景観として際立って人をひきつけるようなものではないかもしれないし、平野に整然と区画整理された田んぼのように多くの収穫を生み出すことができるわけでもありません。しかしかつてはたしかに島の穀倉地帯であり、ここに暮らした人たちの生きる場でした。コメが次第に作られなくなり、すっかりいなくなっていたカエルの鳴き声も、田んぼがはじまるとまた聞こえるようになり、初夏には水鳥がやってきて、秋には黄金色の稲穂がたなびきスズメが集まる、そうした季節感が戻ってきました。島の人たちが散歩がてら田んぼを眺め、今年の田んぼはどうだろうかと訊いてくださることは私たちの励みです。人々の日常の関心に入り込んでいくという意味では、この活動は良質なアート作品に勝るとも劣らない可能性を持っているのかもしれません。

直島コメづくりプロジェクトでは、一年を通じてコメづくりの文化を体験するイベント「コメの体験」を年3回開催しており、春に開催する「田植え」、秋の「稲刈り」、そして年末には育てたお米を使って「おもちつき」を直島町民の方々とともに実施しています。

今年も、6月の「田植え」を皮切りに、12年目のコメづくりが始まります。

次回の連載では、この直島コメづくりプロジェクトを通じた、地域社会との関わりの様子について、お伝えします。

ブログ記事ー一覧

アーカイブ・シリーズ 第5回 クリスチャン・ボルタンスキー「心臓音のアーカイブ」

2020.09.17

アーカイブ・シリーズ 第5回 クリスチャン・ボルタンスキー「心臓音のアーカイブ」

クリスチャン・ボルタンスキーの「心臓音のアーカイブ」は、「遠く離れた地に、世界中の人の心臓音を聴くことができる『図書館』をつくる」というコンセプトのもと、2010年、豊島・唐櫃地区の唐櫃八幡神社境内にある王子が浜に建設・公開されました。記事を読む

アーカイブ・シリーズ 第4回 李禹煥による自然石を用いた作品制作プロセス

2020.09.10

アーカイブ・シリーズ 第4回 李禹煥による自然石を用いた作品制作プロセス

2010年6月15月、直島・倉浦の谷あいに開館した李禹煥美術館は、作家・李禹煥氏の名を冠した一作家による美術館です。李氏が作品に用いる素材の一つとして自然石が挙げられます。今回の記事では、李禹煥美術館の作品の制作プロセスの一部をご紹介します。記事を読む

アーカイブ・シリーズ 第3回 片瀬和夫 「茶のめ」

2020.09.03

アーカイブ・シリーズ 第3回 片瀬和夫 「茶のめ」

片瀬和夫氏の「茶のめ」は、1994年の「Open Air '94 "Out of Bounds" ―海景の中の現代美術展」で公開されました。禅僧の仙厓の言葉「これ食ふて茶のめ」にヒントを得た作品で、禅問答のようにも、アートへ気楽に向き合うことを促しているようにも取れます。記事を読む

アーカイブ・シリーズ 第2回 大竹伸朗 直島銭湯「I♥湯」

2020.08.26

アーカイブ・シリーズ 第2回 大竹伸朗 直島銭湯「I♥湯」

実際に入浴できるアート施設、直島銭湯「I♥湯」には、大竹氏によって日本各地から集められた様々なオブジェが、建物の内にも外にもコラージュされています。その中でも特に存在感の大きい象のオブジェ「サダコ」にまつわるエピソードを紹介します。記事を読む

アーカイブ・シリーズ 第1回 草間彌生「南瓜」

2020.08.19

アーカイブ・シリーズ 第1回 草間彌生「南瓜」

草間彌生氏による「南瓜」は1994年に直島で開催された「Open Air '94 "Out of Bounds" ―海景の中の現代美術展―」で公開されました。サイズはそれまでに制作された「南瓜」のなかでも最大級で、初めて野外での展示を意識してつくられました。記事を読む

お客様からの感想をご紹介(2020年7月)

2020.08.18

お客様からの感想をご紹介(2020年7月)

ベネッセアートサイト直島の3島の施設が揃って開館してから、約1か月。今年7月に地中美術館と豊島美術館を訪れたお客様からアンケートでいただいたご感想の一部を紹介させていただきます。記事を読む

メッセージ
アクセス
アート
宿泊
お問い合わせ
プレス
教育プログラム