「宮浦ギャラリー六区」、プロジェクト始動。
直島・宮ノ浦地区にある「宮浦ギャラリー六区」は、人々が交流する中から新しい価値が生み出される「たまり場」となることを目指し、来場者が単に作品を鑑賞するだけでなく、ワークショップやトークなど様々なイベントに参加する場所として、この夏から再始動しました。
その一環として、今年の7月から9月にかけては、「アーティスト in 六区」を開催しました。この企画では、瀬戸内国際芸術祭2016でのプロジェクトの実現を見据え、アーティストを招聘。直島に約10日間滞在いただき、来年のプロジェクトのためのリサーチとともに、滞在期間の後半に、島民や島を訪れた方々と、滞在中に得たリサーチの成果やアイデアを共有し、交流するイベントを行っていただきました。
現代社会と、それぞれの方法で向き合う3人のアーティスト
今回招聘したアーティストは、丹羽良徳さん(1982年生まれ)、飯山由貴さん(1988年生まれ)、片山真理さん(1987年生まれ)の3名です。
7月22日から31日にかけて滞在したのは丹羽良徳さんです。丹羽さんは、「共産主義」や「貨幣価値」「物や土地の所有権」を巡る人や組織に対して、"ある行為"を試み、その一部始終を記録し、編集し、映像に収める作品を制作しています。
第2弾の飯山由貴さんの滞在は、8月27日から9月3日。飯山さんは、ネットオークションで落札したスクラップブック(新聞や雑誌の切り抜きが張られた冊子)を収集し、そこから見えて来た歴史的事象や個人の思いを、現代社会の状況や作家自身の思いと重ねあわせながら、インスタレーションを制作しています。
9月24日から10月3日にかけて滞在したのは、片山真理さん。片山さんは、先天的な脛骨欠損のため9歳で両足を切断して以来、義足で生活されています。以後、自らが装飾した義足を使用したセルフポートレートなど、自身と自身を取り巻く世界との関わりを作品化しているほか、近年では、音楽、講演、執筆など、活動の幅を広げています。
"新しい何か"が生まれる場所に
関心の対象、表現の手法が全く異なる三人のアーティストによるプロジェクトの本格的実現は、瀬戸内国際芸術祭2016。既に今年7月から9月にかけての滞在でも、アーティストが披露するアイデアの片鱗に、島民や島を訪れる方々、スタッフが応えフラットに関わり合う様子が見受けられました。宮浦ギャラリー六区は、その目指す姿である"人々が交流する中から新しい価値が生まれるたまり場"へと第一歩を踏み出しつつあります。
三者三様のスタイルで展開された彼らの滞在の様子は、今後、詳しくレポートしていきます。
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