ベネッセアートサイト直島 Benesse Art Site Naoshima

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10周年を迎えた「ストーム・ハウス」について、ご近所の方と運営スタッフにお話を伺いました

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーによる「ストーム・ハウス」は2010年7月19日、瀬戸内国際芸術祭2010の開催と同時に開館しました。瀬戸内国際芸術祭2019では、会期中の107日間で約3万3千人が「ストーム・ハウス」に入館しました。

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーは「第4回(2001)ベネッセ賞」受賞者で、高度な音響技術を駆使して作品空間を作り上げる、サウンド・インスタレーションで知られる作家です。

※ベネッセ賞:1995年、福武書店からベネッセコーポレーション(現:ベネッセホールディングス)への社名変更を機に、傑出したアーティストのアート活動を評価し、企業理念である「Benesse=よく生きる」を具現化するアーティストを支援する目的で始まりました。



ベネッセアートサイト直島の作品の多くは、その場所、その空間でしか体験できないサイトスペシフィックワークです。「ストーム・ハウス」は、実際に使われていた豊島・唐櫃岡の空き家を改修し、アーティストが家の空間そのものを作品化し、嵐がやってきてから過ぎ去るまでの約10分間を体感できます。激しさを増す雨と、鳴り響く稲妻、木の影のざわめき、吹き荒れる突風と室内に訪れる変化によって鑑賞者は非日常世界へ連れ込まれます。現実の天候とのギャップのあるなか、全身で嵐を体験し、自身の嵐の記憶が呼び起こされることで、鑑賞者は「嵐」の世界に没頭させられます。

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写真:鈴木心

瀬戸内国際芸術祭2010の会期後に、期間中の人気度や豊島における作品分布などを考慮して「ストーム・ハウス」の継続が決まりましたが、「システムや機械が復旧できない状態になったら閉館すること」が継続の条件でした。

2016年、直島のホテル・ベネッセハウス ビーチ棟の客室(スイートダブル ROOM 2201)にて、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーが2週間滞在し制作した「Dreaming Naoshima」(宿泊者のみ鑑賞可能)が公開されました。この作品を制作中だった2015年12月、「ストーム・ハウス」を5年ぶりに訪れたジョージ・ビュレス・ミラーは「想定よりも状態がいい」ととても驚いていたそうです。

立ち上げ時から関わる技術者が複雑なシステムを丁寧にメンテナンスし続けたこと、プログラムの入った旧型パソコンが壊れ「このまま閉館するしかない」と諦めかけたときに、再プログラミング可能な同型パソコンを関係者が探し出してきたこと、こえび隊をはじめとするスタッフがしっかりと管理・運営してきたこと、地元の方に理解され愛されてきたことで、2020年7月19日、ついに「ストーム・ハウス」は10周年を迎えることができました。

「この作品を通じて、人とコミュニケーションする楽しみが増えた」

「ストーム・ハウス」が地元の方にどのように受け止められているのか、ご近所に住む高田富美子さんにお話をお聞きしました。
「作品ができた頃はね、大きな雷の音にビックリしたけど、今はもう慣れました。夏だとね、クーラーをかけるときは窓を閉めるから、実はあんまり音が聞こえないのよ。だから、全然問題ない。(7月11日からの再開準備で稼働テストをした)今日は久しぶりに音が鳴ったから、本物の雷かと思って慌てたわぁ。庭仕事をする予定だったから、どうしようかと悩みました」と、冗談交じりに話してくださいました。

そんな高田さんに、作品ができてからの変化をお尋ねしました。
「前は観光客なんて全然いなかったけど、今はお客さんが増えてにぎやかになったね。外国人が多いから『英語ができたらよかったなー』と思うこともある。外国語で話しかけられることもあって、その時は身振り手振りで話すのよ。そういうのも楽しいです。この作品ができてよかったわ」と笑顔でお話しくださいました。

「ストーム・ハウス」の向いに住む山本彰治さんに「今年もよろしくお願いします」とご挨拶に伺った際も「雷の音が聞こえない日は、むしろ寂しいくらいだった」と温かく歓迎していただきました。

建物の外にまでかなり大きな音が聞こえ、瀬戸芸期間中は1日に500人を超えるゲストが訪れる人気作品だからこそ、地元の方々の懐の深さとご理解なくしては成り立ちません。

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(写真 左)「ストーム・ハウス」のご近所に住む 高田富美子さん/(写真 右)こえび隊 高橋暢茂さん(島キッチンにて)

「ノスタルジックな作品で、わかりやすいから、ゲストが自然と笑顔になる」

「ストーム・ハウス」の運営を長年担当されている、こえび隊の高橋暢茂さんは、「この作品は、誰でも楽しめて、鑑賞した人がみんな笑顔になるんですよ。夏場は虫除けで蚊取り線香を焚くんです。集落にある古民家で、畳があって、小さい部屋に分かれているので、『おばあちゃんちに来たみたい』と懐かしがる声をよく聞きますね。特に快晴の日は、作品を鑑賞し終えた方が『あ、晴れてる!』と、現実とのギャップに驚くことも多いですよ。なかには『いやー、雨あがったねぇ(笑)』と冗談を言われたり、台風の日は『中も外も嵐だ!』と楽しそうにこえび隊にお話しされる方もいます。ゲストが自然と笑顔になる『わかりやすさ』が、この作品のよさだなぁと私は思っています」とおっしゃり、さらに「豊島の作品のなかでも『ストーム・ハウス』は芸術祭のはじまりからずっとあるので、『初めて担当したのがここだ』など、思い入れのあるこえび隊のボランティアスタッフも多いですね。彼らがいろいろ改善提案してくれて、運営面でも少しずつ工夫してきました。外国人のゲストも多いので、例えば、定員人数の表示や、靴を脱いでくださいという説明書きも、彼らが作ってくれました。2015年に作家のジョージさんが来てくださったとき、表示を外そうかなとも思ったんですが、敢えてつけた状態で案内したら『いいね、おもしろい!』と喜んでくださったことは、スタッフ一同とてもうれしかったですね」など、作家との思い出も語ってくださいました。

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写真:鈴木心

「ストーム・ハウス」は2020年7月11日から11月29日までの土日祝日に開館します(詳しい開館情報は開館カレンダーをご参照ください)。瀬戸内国際芸術祭に引き続き、施設運営はこえび隊のボランティアが担います。「ストーム・ハウス」を体験した後は、感想やご自身の過去の思い出を、運営スタッフへぜひ気軽に伝えてみてください。作品を介して生まれる、偶然その場に居合わせた人々が紡ぎ出す交流が、この作品のおもしろさの一つと言えるのかもしれません。

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