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直島に受け継がれる豊かさ、美しさを今に伝える
The Naoshima Plan 2019「水」
三分一 博志

直島の本村集落の中心に建つ、築約200年の旧家。古くは郵便局として島民に親しまれてきたこの建物は、瀬戸内国際芸術祭2019の期間中、来島者と島民との憩いの場となっています。建物の改築を手がけた建築家・三分一博志氏は、建築や街区、水路などを通して直島本来の人と自然との営みを浮き彫りにするプロジェクト「The Naoshima Plan」を2011年から展開してきました。

The Naoshima Plan 2019「水」 外観
The Naoshima Plan 2019「水」 外観

三分一氏は、直島で2013年に「風と水のコクピット」、2015年には多目的施設「直島ホール」と個人住宅「直島の家 - またべえ」を手掛けています。直島で4作目となるThe Naoshima Plan 2019「水」は、三分一氏が「動く素材」と呼ぶ風・水・太陽などの中でも、直島の風と地下水脈をテーマとした建築作品です。

「直島の家々は、まるでリレーのバトンを繋ぐように風をリレーしている」

三分一氏が最初に着目したのは、直島の風の流れでした。直島の本村集落の家々を調べていくうちに、その間取りにある共通点を見つけたそうです。本村の旧家には家の南北に続き間が設けられ、どの家にも続き間の南と北に庭がありました。そして、同じ造りの家々が風の向きに沿って建てられていたそうです。直島島民向けに行われた勉強会で、旧家のこうした構造について三分一氏は、集落の「風のリレー」という言葉で説明しました。

直島島民向けThe Naoshima Plan 2019「水」勉強会の様子
直島島民向けThe Naoshima Plan 2019「水」勉強会の様子

「風が家の続き間を抜けて、次の家、また次の家と抜けていくという構造です。まるでリレーのバトンを繋ぐように、風をリレーしている。今の住宅では、自分の部屋だけをエアコンで涼しくして、室外機で温かい空気を外にまき散らしていますよね。だからどんどん外が熱くなります。本村の旧家の構造が素晴らしいのは、風上の家から抜けてきた風を、自分の家で止めることなく、また次の家にバトンしているところです。自分の家だけでなく、周りも涼しくなるような建築がされています。1781年高田浦大火絵図からも、本村の集落は1700年代には現在と同じ街割が既に確立されていたことが分かっていますが、1500年代末期から徐々に当時の天才的な建築家や都市計画家によって、こうした家や街割の構造が考え出されたのではないでしょうか」

この直島の「風のリレー」を再現するため、The Naoshima Plan 2019「水」では、増築されていた建物を取り除き、風が南から北へ抜ける旧家の本来の姿を蘇らせました。さらに、南北の入り口に、2001年から直島で「のれんプロジェクト」を展開している染織家・加納容子氏が制作したのれんを掛けています。のれんの動きによって、直島の「風のリレー」を視覚的にも感じることができるという仕掛けです。

「400年前の建築家が何を伝えようとしているかはっきりと分かる」

直島では、風だけでなく、地下水脈もまた「リレー」されていると三分一氏は言います。本村には集落全体に地下水脈が張り巡らされていて、多くの旧家には個人の井戸があったそうです。井戸水は集落の共有財産。また、飲み水としては使っていなかった井戸水であっても、「水を汚さないように心がけていた」と島民の方々は昔を振り返ります。こうしたリサーチを経て、三分一氏は直島の水の価値を伝えるべく、旧家の改築を行いました。井戸には常に一日約2トンの水が湧き出ています。The Naoshima Plan 2019「水」では、井戸からくみ上げた伏流水を湛えた水盤が中庭に設けられており、来場者はこの水盤に手で触れたり、足をつけたりしながら、直島の水の清らかさや冷たさを体感することができます。

「本村の道には水路がキレイに整備されていて、水が集まるようになっています。建物にはすべて塀があって、門があって、屋敷がある。歴史家が調べたところでは、こうした碁盤目の街割と門と塀で囲まれた屋敷群は瀬戸内海の島では直島の本村にしかないそうです。他の島々の集落では、港から道が短冊状に並んでいますが、本村では各家が屋敷のような形をしています。本村の古い町並みを調べていくうちに、400年前の建築家が何を伝えようとしているということが私にははっきりと分かりました。本村の涼しい風は南から吹いていること、地下にはきれいで豊かな水脈が流れていること。そしてそれは、今後400年後の子孫たちにも伝える価値があるものだと私は考えています」

2019年4月24日に開かれた直島島民へのお披露目会の様子
2019年4月24日に開かれた直島島民へのお披露目会の様子

The Naoshima Plan 2019「水」は、瀬戸内国際芸術祭2019の会期中のみ、月曜日(祝日の場合は翌日)を除く毎日10:00から16:30の間、開館します。The Naoshima Plan 2019「水」は直島島民の方がスタッフとして運営していますので、気軽にお声がけし、直島の暮らしについての話を聞いてみてはいかがでしょうか。

<The Naoshima Plan 2019「水」>
開館日:瀬戸内国際芸術祭2019会期中
(春会期:4月26日~5月26日、夏会期:7月19日~8月25日、秋会期:9月28日~11月4日)
開館時間: 10:00~16:30
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日休館)
鑑賞料金:無料

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