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犬島「家プロジェクト」I邸 「Self-loop」
オラファー・エリアソン インタビュー

瀬戸内国際芸術祭2016秋会期を機に、2016年9月から犬島「家プロジェクト」I邸にて公開されている、ベルリン在住のアーティスト、オラファー・エリアソンによる「Self-loop」。作品の設置に合わせて犬島を訪れたオラファー・エリアソンに、犬島を訪れる鑑賞者への思い、自身の作品を通して触れた犬島についてお話を伺いました。

self-loop_talk_1-2.jpg
Olafur Eliasson
Self-loop, 2015
Wood, mirror, aluminium, stainless steel
Dimensions variable
Photo: Fukutake Foundation
Installation view at Art House Project, Inujima, 2016
© 2015 Olafur Eliasson

オラファー・エリアソン:
「私の作品『Self-loop』は、妹島和世氏設計の素晴らしい建築のなかにあるわけですが、初めてこのI邸の空間に入ったとき、手前の部屋と奥の部屋とを分けている枠そのものがまるで鏡のように見えました。この大きく開いた枠をまたいで入っていくと、そっくり同じような部屋が向こうにも広がっていて、くうを通り抜けるような感覚がありました。鏡が作用する作品を置くのにぴったりの空間だと思ったのです。
その空間の内部に、3つの鏡を置いています。一見すると、鏡の配置は無作為に見えるかもしれません。それぞれの鏡は中心を向いたりしていないし、部屋の構造に従っているわけでもありません。一つは部屋の隅に、もう一つは手前に、3つ目は奥のほうに置かれています。配置の規則性は見えてこないかもしれません。

作品空間の中央には、丸い輪のついたビューファインダーがあり、ガイドのような役割を果たしています。ここから鏡を覗くと、鑑賞者は鏡のなかにトンネルのように同心円状に映り込む自分と周囲の景色を見出します。

この作品は、見ること、見られることを考えさせるものです。作品を制作するにあたって、『見る』ということの空疎さ、あるいは『見るものと見られるものの間にあるもの』について考え、『見ることそのものを見るとはどういうことか』を自問し続けました。鏡を配置しながら、ちょっとしたユーモアをこめて、鏡を見ている人が鏡を見ている自分を背後から見ている、という状況を作ってみようと考えたのです。I邸の外の庭は、いわゆる形式的な庭でなく、文化と自然をミックスしてつくられたソフトな風景です。ロマンチックな庭園ですね。それを鏡が映し出すようになっていますが、皆さんが鏡の中を覗いた時に、外に広がる庭を見る自分の後ろ姿が時折目に入るように鏡を配置したら面白いだろうと思いました。そうすると、見ている行為を行っている自分の姿を外から眺めていることに気づくのです。」

self-loop_talk_2.jpg
オラファ―・エリアソン氏
Photo: Fukutake Foundation

オラファー・エリアソン:
「自分はいかにして見ているのだろうか、もしくは、なぜそれを見ているのだろうか。
私たちは、主観的にものを見ます。それは個人的な体験であるともいえます。その体験がどのように、そしてなぜ起こるのかを考えてみる、ということです。

とくに『なぜ』という問いが重要です。『なぜ』と問うことは、自身の行動や、行為の理由を振り返るうえで私たちに備わっている能力です。私たちが見ているものは現実なのだろうか? あるいは、見る行為がそれを創り出しているのだろうか? 自分は世界を取り込もうとしているのだろうか? それとも、見る行為によって世界に自分を投影しているのだろうか? いずれも興味深い問いかけであり、それは、ものを見ることについての臨界を考えるということなのです。

私の考えでは、もし自分の知覚に対して所有権があるとすれば、見ることは消費的な行為でなく、むしろ生産的な作業であると思います。そう考えると、この空間での私たちの動き、例えば丸い輪を目印に自分の視点を選ぶこと、鏡の中にある無限のトンネルを見つけること、それらすべてが能動的な行為だと思えるのです。これらの行為は、どこかの店に入って、何となく影響されて物を買ってしまうというような、受動的なものとは違います。

このI邸を訪れる人はみな生産的な主体です。ここを訪れる人は、私と共同で作品をつくる人であり、私と同様の責任を負うアーティストであると言えると思います。その考えには深く民主的な性質があり、どの人も同じように大切な存在であるということなのです。」

世界中の様々な場所で活動する氏に、今回犬島を訪れ、犬島に自身の作品を展示して感じた印象を聞いてみました。

オラファー・エリアソン:
「今日は雨が降っていて、すべてが濃密な雰囲気を湛えています。この島に来る、ということは私にとって、島を見に来るというよりは、環境を体験しに来るというような感覚があります。というのも、島は環境を反映しやすいと思えるからです。島が遠隔にあると、その密度の濃さをあまり感じることはないかもしれませんが、見てのとおり、この島はとても濃密です。先ほど犬島で見かけた魚は自分が魚であることを自覚していたし、犬島の空に見た鳥は自分が鳥であることに意志をもって飛んでいるようでした。そんな小さな事が、実はすごく重要で、とても大切に思えます。家に帰って振り返ったとき、島は濃密で生命にあふれる場所だったと思えるような、そんな事物がここにはあると思うのです。

もう一つ興味深いのは、瀬戸内の島々が近代史の爪痕を残している点です。100年、200年というレベルの痕跡がある。今、いわば、それらの歴史を昇華するかたちで次の段階に進もうとしているのですが、それだけに、この家プロジェクトのように、全く別の種類の場づくりや活動がここで生まれつつあるのはとても喜ばしいことです。ユニークで、濃密で、生き生きとした、ダイナミックな視点が生み出されていっているのです。」

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