Nadegata Instant Party
「Well, come on stage!」
-spring-
豊島の中央にそびえる、檀山。
標高340m、スダジイやクヌギなどの原生林が生い茂り、そこから湧き出る清水は、麓から海岸にかけて広がる豊島の3つの集落に暮らす人々の生活を支えています。一般的に、島は慢性的な水不足に悩まされるものですが、豊富な湧き水を抱く檀山があるおかげで、豊島では古くから稲作をはじめとした農業や酪農が盛んであったといわれています。
瀬戸内海が一望できる山頂からの眺めは、島の人々にとっても自慢の風景。多くの人にこの風景を楽しんでもらおうと、島の有志によって継続的に山道が整備されています。檀山は、様々な意味において、豊島で暮らす人々にとってかけがえのない存在です。
瀬戸内国際芸術祭2016参加プログラムとして、今回、この檀山を舞台にイベントを展開するのは、アーティスト・ユニット、Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)。
地域にコミットし、さまざまな人々を巻き込みながらインスタレーションやイベントを展開してきた彼らは、今回、檀山を舞台に演劇を企画。春会期・夏会期中に小さなイベントや公開制作を通して島にまつわるエピソードをリサーチし、その集大成として秋に、地域の人々が主役となる演劇を実施します。檀山、そして豊島の魅力を再発見し、深堀りする試みです。
春会期のイベント実施のため、4月2日、Nadegata Instant Partyメンバーが豊島入り。イベントに先立ち、豊島島内にて開催されたアーティストトークにて、これまでの自身の活動を紹介するとともに、豊島でのプロジェクトについての思いを語りました。
「今回のプロジェクト名は、『Well, come on stage!』。『come on stage』が"主役になる"とか"舞台にあがる"という意味があって、それと『welcome』とかけているような、そういうタイトルになっています。豊島のこと、檀山に関するエピソード、歴史や謂われを聞きながら、聞いたお話を素材にして、できれば地元の方に舞台にあがっていただきたいなと思っています。イメージ的には、農村歌舞伎みたいな――。舞台小屋みたいなものがあって、それを自分たちの晴れのお祭りのためにやっていくようなことが地域によってあったりすると思うんですけど、そういったものが今更ながらにもう一度つくれたら面白いんじゃないかな、ということをちょっと考えています。」
昨年10月から豊島に通い始めたNadegata Instant Party。豊島の方々へのインタビューを地道に重ねながら、リサーチを進めています。
アーティストトーク後の週末には、春のイベントとなる「檀山お花見ピクニック」を開催。島外からの参加者、島の人、こえび隊(芸術祭ボランティアスタッフ)として活動している方々、豊島美術館等で働くスタッフなど、さまざまな参加者が集まりました。一部の参加者は、麓からのウォーキングにも参加。豊島の地元の方々にガイドいただきながら山頂を目指しました。
豊島で商店を営む岡崎義輝さん。小さいころから、檀山へ続く道は遊び場だったといいます。
途中、予定していたルートから少しはずれ、地元の方だけが知る農道(山頂への近道)へ。タラの芽など山菜を摘んだりしながら、檀山周辺で遊んでいたころを思い出し、当時まだこのあたりに家々があったことなどお話いただきました。豊島は、昭和20年ごろから戦後の開拓団が入植し、「檀山開拓団」として山の中腹あたりまで人々が家を構え、土地を耕していた時代がありました。今はすべての人が山を下りています。この農道も、しばらく放置され木々で覆われていたところを、行き来できるように地元青年団の方々が整備されたとのこと。「やっぱり、みんな、同じような思いの人がいっぱいおります。豊島にね。」
山頂では、桜に囲まれながらお酒や食事を楽しみ、Nadegata Instant Partyの進行のもと、参加者全員による自己紹介や、カラオケ、大縄跳びなどで交流を深めました。
豊島在住の女性2人が甲生地区に新しく開いた「ドンドロ浜商店」からは、お弁当を出張販売。豊島自慢の苺を使った、春らしい「いちご甘酒」も好評でした。
夏・秋会期に向けてのウォーミングアップともいえる今回のイベント。夏会期には、9月3日(土)、4日(日)に豊島で参加型のイベントを予定しています。春会期にご参加いただけなかった方も、ぜひご参加ください(詳細は、決まり次第ウェブサイトで告知します)。
集大成となる秋の演劇制作に向けて、これからさらにリサーチを重ねていくNadegata Instant Party「Well, come on stage!」。今後の展開に、ぜひご期待ください。
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