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アーティストin 六区 2016
vol.2 丹羽良徳「歴代町長に現町長を表敬訪問してもらう」

直島の宮浦ギャラリー六区にて、昨年の瀬戸内国際芸術祭2016会期にあわせて展開した「アーティスト in 六区 2016」広報誌「NAOSHIMA NOTE」の最新号でもこの取り組みについて特集しています。

春・夏・秋と、芸術祭会期ごとに異なる3人の若手アーティストを招聘したこの連続企画。春会期の飯山由貴「生きている百物語」に続いて、夏会期(2016年7月18日-9月4日)には、丹羽良徳による「歴代町長に現町長を表敬訪問してもらう」が展開されました(現在は公開を終了しています)。丹羽は、社会や公共空間に対して自らが行動し、それを映像作品化することで、人々が当たり前だと見過ごしているものへの認識を揺さぶり、抱える矛盾を解体し、公共性への新たな視点を提示してきました。近年は、1982年生まれの丹羽が生まれる以前に起きた歴史的事実を現代からアプローチする試み―「ルーマニアで社会主義者を胴上げする」(2010)や「モスクワのアパートメントでウラジーミルレーニンを捜す」(2012)など、社会、思想、歴史に介入する作品を発表しています。作品の一部は、丹羽良徳ウェブサイトでもご覧いただくことができます。

「アーティスト in 六区 2016」の一環として、今回直島にて展開された「歴代町長に現町長を表敬訪問してもらう」は、霊媒師や霊能者に依頼し、過去の直島村・町長の霊を呼び寄せ、現直島町長を表敬訪問することを試みたプロジェクトです。現実社会の中に、限りなく偽りに近い存在を持ち込み小さな混乱を起こさせることで島の歴史や時間の不可逆性を考えるこの試み。現直島町長、歴代町長のご親族・ご子孫、全国各地の霊媒師への「交渉」や、実際の表敬訪問の記録から構成される9面の映像作品を中心としたインスタレーションが展開されました。丹羽氏の企画展ステートメントはこちらからご覧いただけます。

会期中には、宮浦ギャラリー六区内に展示される作品を鑑賞することに加え、様々なイベントを通して、作家やゲスト、来場者がこの作品についてディスカッションする場面が生まれていきました。
・2016年7月18日(月・祝) オープニングトーク
・2016年8月13日(土) 全方位全方角映像作品連続上映会(丹羽良徳の全映像作品をオールナイトで一挙上映)
・2016年9月3日(土) クロージングトーク

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今回、NAOSHIMA NOTE 2017年5月号「宮浦ギャラリー六区『アーティスト in 六区 2016』」の発行にあわせ、改めてこの丹羽作品を振り返るとともに、会期中に行われたトークイベント等を通じて現場でどのようなことが語られてきたか、トーク内容のアーカイブ記事等とともにまとめてお届けします。

オープニングトーク

「歴代町長に現町長を表敬訪問してもらう」公開初日となった昨年7月18日(月・祝)、宮浦ギャラリー六区近くの西武公民館にて開催したオープニングトークでは、芸術人類学者の中島智氏をお招きし、作家との対談を実施しました。

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中島氏は、アフリカや中国等の部族文化を専門に研究され、「再魔術化するアート」、「亡霊としての芸術」といった論文を発表されており、その問題意識は、シャーマンや霊、亡霊といったキーワードにおいて、今回の丹羽の作品が扱うテーマと共通しています。

このトークでは、まず、丹羽氏から今回の作品の制作背景についてお話しいただき、丹羽氏と中島氏との議論が展開されました。中島氏は、自身がフィールドワークで目にした霊媒の事例と、今回の丹羽作品に見られる事例を比較検討しながら、今回、丹羽氏が仕掛けた行為が、個人の私的な領域と公的な歴史の関係の複雑さを明るみに出したことを指摘。同時に、ものごとの真偽の両義性、多義性を考えさせるという意味において、実はアーティストと霊媒師は、ある側面で似たような役割を担ってきたのではないか、という議論も展開されました。

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作家の丹羽良徳氏(左)と、トークゲストの中島智氏(右)

トークには今回の作品の"主演俳優"ともいえる濵中満・現直島町長をはじめ、直島町民の方も多く参加され、濵中町長からは、この作品に関わった正直な感想をお話いただく場面も。トーク内容のアーカイブ記事はこちらからご覧いただけます。

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濵中満・現直島町長(右端)

全方位全方角映像作品連続上映会

また、会期中頃にあたる8月13日(土)には、丹羽良徳の全映像作品をオールナイトで一挙上映する「全方位全方角映像作品連続上映会」を実施。トークゲストには、旧東欧地域の近現代美術を主軸に、社会の中で芸術が担う役割を研究・考察され続けてきた加須屋明子氏(京都市立芸術大学美術学部・大学院美術研究科 教授)をお招きし、滞在中のウィーンからSkypeで出演する丹羽氏と共に、世界各地を舞台とした作品の軌跡から、今回の作品を改めて検証する機会となりました。

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トークゲストの加須屋明子氏
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Skypeで丹羽氏と会話する参加者

クロージングトーク

そして、会期最終日前日の9月3日(土)、「〈まつりごと〉を上演する――幽霊と、祝祭の政治学」と題して開催したクロージングトークでは、劇作家の岸井大輔氏と批評家・編集者のF.アツミ氏をお招きし、丹羽氏は再び滞在中のウィーンからSkypeで参加するかたちでトークを実施。

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トークゲストのF.アツミ氏(檀上左)、岸井大輔氏(檀上右)

岸井氏は、自らを"現代劇作家"と呼ぶように、介入型芸術、つまり舞台を使わず人間のやる行為そのものを使って全国各地を遍歴しながら演劇を展開され、今回丹羽作品で扱われている「霊媒」や「憑依」も演技の方法のひとつだと言います。Art-PhilのF.アツミ氏は、丹羽良徳の共産主義シリーズをまとめたモノグラフ『歴史上歴史的に歴史的な共産主義の歴史』を2015年に出版された経験から、丹羽作品を現実における政治のアレゴリー(寓意)として捉える可能性などについて述べられました。お二人ともに以前の丹羽氏との対談を経て、その延長上の試みとして今回の直島での鼎談が実現しました。

「歴代町長に現町長を表敬訪問してもらう」のリサーチや交渉の過程の中で見えてきた様々な関係性や、それらを踏まえたときに、瀬戸内国際芸術祭という枠組みの中で丹羽氏が今回直島でプロジェクトを進めるということがどういうことだったのか、そして霊媒を用いて公共へ介入した丹羽氏が我々に問いかけるものは何なのか――。さらには、昨今の「地域アート」問題に照らし、今回のプロジェクトはいかなる可能性を見せたのか等について、議論は及びました。トーク内容のアーカイブ記事はこちらからご覧いただけます。なお、本展示は後日、丹羽氏の書籍『資本主義が終わるまで』において、批評家の藤田直哉氏と政治学者の小林正弥氏によって言及されています。

それぞれのトークアーカイブは、現場で語られた内容をほぼそのまま掲載しています(一部、編集加筆修正箇所あり)。ぜひ、NAOSHIMA NOTE 2017年5月号とあわせてご覧ください。

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