建築について
建築は、1992年開館のベネッセハウス ミュージアム以降、30年以上にわたり直島の数々の建物を手掛けてきた安藤忠雄氏が設計を担当します。丘の稜線をゆるやかにつなぐような大きな屋根が特徴的な建物は地下2階、地上1階建てです。トップライトから自然光が入る階段室は地上から地下まで直線状に続いており、階段の両側に4つのギャラリーが配置されています。地上フロアの北側にはカフェを併設し、瀬戸内海を臨むテラスから、豊島や行き交う漁船など、瀬戸内海らしい景観を眺めることができます。
美術館の外観は本村の集落の景観になじむよう、焼杉のイメージに合わせた黒漆喰の外壁や小石が積まれた塀などを予定しており、美術館までのアプローチや建築からも直島の歴史や人々の営みと体験が緩やかに繋がるようデザインされています。
ロゴについて

地中美術館や豊島美術館のロゴは、それぞれ時代が異なる明朝体をベースに作成しました。直島新美術館のロゴの和文の骨格も、昭和16年(1941)頃から使用されている新聞用扁平明朝体をベースに、縦と横の太さの差を少なくすることで文字のサイズが小さくなっても可読性が保たれるタイプの明朝体です。そして、「直」の文字は福武財団の発足当時に用いていた最終画がなめらかな「直」です。欧文は、字送りが同じになるように合理的に設計されたスラブ系のタイプライター用書体です。和文・欧文とも数百年先を見据える直島新美術館のロゴとして、どのような変化にも対応するロゴにしました。
祖父江 慎
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祖父江 慎そぶえ しん
1959 年、愛知県生まれ。アートディレクター、コズフィッシュ代表。並はずれた「うっとり力」をもって書籍や展覧会のデザイン、グッズのブランディングなど幅広いジャンルのデザインを手がけている。地中美術館、豊島美術館のロゴ、スヌーピーミュージアム東京のアートディレクション、ミッフィー展、エヴァンゲリオン展、さくらももこ展、北斎展など多くの展覧会を手掛ける。
関係者ご挨拶
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福武總一郎ふくたけ そういちろう
私にとって直島新美術館は、35 年以上にわたるこれまでの活動の集⼤成と⾔えます。直島新美術館では、基本、アジアのアートを中⼼として開始する予定です。ベネッセアートサイト直島全体として考 えれば、新たな美術館ができることによって、作品は欧⽶と⽇本を含むアジア地域にわたることになります。直島新美術館も幸せなコミュニティづくりに貢献することで、少しでも明るい未来の象徴に なることを願います。
ベネッセアートサイト直島代表。瀬戸内国際芸術祭 総合プロデューサー。大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 総合プロデューサー。公益財団法人 福武財団 名誉理事長。株式会社ベネッセホールディングス 名誉顧問。 1973 年株式会社福武書店入社。1986 年代表取締役社長。2007 年に代表取締役会長兼 CEO。2016 年 10月より名誉顧問。
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福武英明ふくたけ ひであき
建築や作品は完成すると、それが最終形であると思われがちです。しかし、その先に何か新たな “動き” や “循環” を⽣み出すことはできないだろうか――ベネッセアートサイト直島において直島新美術館は、この “動き” を促す連携の拠点の役割を担うことになると思います。直島新美術館を拠点として、アー ティストや建築家だけでなく、島⺠や来訪者も含めた⽅々との交流や協働を通して、新たな “動き” が ⽣み出されていくことを望みます。
公益財団法人 福武財団 理事長。株式会社ベネッセホールディングス 取締役。株式会社キーエンス、株式会社エス・エム・エスを経て、ニュージーランドにて efu Investment Ltd の設立。Kings Plant Barn、ConsultRecruitment、Hulbert House 等、複数の企業を現地で経営。2020 年 Still Ltd を創業し、様々な事業やイニシアティブを通して、世代を超えて残る新しい文化を興す活動に取り組む。2023 年 1月より福武財団 理事長。
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安藤忠雄あんどう ただお
直島を世界的に有名な芸術文化の島として開花させたのは、福武總一郎さんの熱意に他ならないと私は考えています。世界中に立派な美術館はたくさんありますが、直島のようにクライアント個人の感性が光り輝いている美術館は稀有だと思います。福武さんとの出会いから 35 年以上経った今、新美術館に携わるのも、福武さんの自由な精神と強い意志に、これからもついていこうという気持ちがあるからです。
1941年大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年安藤忠雄建築研究所設立。1979年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、1993年日本芸術院賞、1995年プリツカー賞、2005年国際建築家連合(UIA) ゴールドメダル、2010年ジョン・F・ケネディーセンター芸術金賞、後藤新平賞、文化勲章、2015年イタリアの星勲章グランデ・ウフィチャ―レ章、2016年イサム・ノグチ賞、2021年レジオン・ドヌール勲章コマンドゥールなど受賞多数。1997年から東京大学教授、現在、名誉教授。
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三木あき子みき あきこ
この新しい美術館では、 一部展示替えやトーク、ワークショップ など展示以外のより幅広い美術館活動にも取り組んでいく予定です。ベネッセアートサイト直島の活動の次なるフェーズに向けた新たな美術館の展開によって、地域に根差しつつ世界に開かれた直島らしい美術館の在りようとともに、アートと建築と自然、そしてコミュニティのさらなる調和・融合のかたちを探求していければと思います。
ベネッセアートサイト直島インターナショナルアーティスティックディレクター、パレ・ド・トーキョー(パリ)チーフ/シニア・キュレーター(2000-2014)等を歴任。ヨコハマトリエンナーレ(2011 アーティスティック・ディレクター、2017 コ・ディレクター)等複数の国際展 /芸術祭を手掛けるとともに、バービカンアートギャラリー(ロンドン)、台北市立美術館、韓国国立現代美術館、森美術館、横浜美術館、京都市京セラ美術館といった国内外主要美術館のゲストキュレーターも数多く務める。