アジア・アート・プラットフォーム2022
福武ハウスでは瀬戸内国際芸術祭2022 の夏・秋会期において、アジア・アート・プラットフォーム2022 協同展『Communal Spirits /共に在る力』を開催します。
福武ハウスでは、小豆島の一つの集落を通してアジア諸地域がつながるプロジェクト「アジア・アート・プラットフォーム」を2013 年より展開してきました。2022年はその取組の一つとなる協同企画の実現を目指し、目的を共にし、連携するアジア地域の5つの団体(以下、パートナー)と福田集落内にある空き家に作品を展示します。
異なる歴史や背景を持つパートナー同士が組織を超えて、企画の初期段階からオンラインでのミーティングを重ね、実施のための役割分担と体制づくりをすることで交流を生み出してます。北川フラムをプロジェクト全体のディレクター、カンボジアのパートナー、リノ・ヴスを本協同展企画のキュレーターとして迎え、リノにより提案された「Communal Spirits/共に在る力」というタイトルに沿って、多彩な5組の作品が集められました。
アジア文化の根底に潜在する様々なアニミスティックな実践ー民間伝承された物語や伝統、土地の精霊や哲学への思考などーをテーマにする5つの作品を通して、かつて私たちの先祖が大切にしてきた目に見えない存在や自然、信仰、土地に根差した生き方に再び焦点を当て、それぞれの地域が直面した社会的・政治的な状況、グローバリズムや近代化による諸問題を捉えなおします。
展示マップを頼りに歩く中で、豊かな自然と人々の暮らしに出会いながら各々の作品を巡り、アジア地域の若手現代アーティストによる異なる表現と目に見えない価値観に触れていただければと思います。
開催概要
- 展覧会名:
- アジア・アート・プラットフォーム2022
「Communal Spirits/共に在る力」
- 開催期間:
- 瀬戸内国際芸術祭 2022 夏・秋会期
(2022年8月5日~9月4日/9月29日~11月6日)
- 入場料:
- 510円(福武ハウス共通、瀬戸内国際芸術祭2022パスポート対象)
- 会場:
- 福田地区内の5つの空き家
- 時間:
- 9:00~17:00 ※入場は16:30まで
※会場には駐車場がありません。福武ハウスの駐車場をご利用ください。
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、検温と受付を一括して福武ハウスにて行います。最初に福武ハウスへお越しください。
アジア・アート・プラットフォームについて
アジア・アート・プラットフォーム
2013年の瀬戸内国際芸術祭から、小豆島のひとつの集落を通してアジア諸地域がつながるために福武ハウスが取り組むプロジェクト。アジアの文化と多様な人々が交差するプラットフォームを目指し、各地域で活動する美術関係団体をパートナーとして、福武財団の資金に加え各々が個別に資金調達を行い作家やシェフを招聘し、アーティスト・イン・レジデンスや展覧会の開催、食のワークショップを小豆島町、福田地区自治連合会との協働で実施するなど、アジアの歴史や固有の文化を通した実践とプレゼンテーションを行っています。
協同展のご紹介
協同展 Communal Spirits/共に在る力
この展覧会は、私たちが生きているこの現実を探求し、それに対処する手段として、霊的なものや目に見えないものを追求する一方、土着の慣習や根付いた伝統を通じて、精霊、幽霊、神々を考察します。同時にそれは、コミュニティや地域の要素、質、価値、あるいは私たちが精神と呼ぶものを包含します。
精霊、幽霊、神々に関する信仰は、私たちの社会、政治、文化、環境の現実をより包括的に理解する上で、どのように役立つのでしょうか。コミュニティや地域が持つ意味の本質を、どのように理解することができるのでしょうか。人間と非人間、見えるものと見えないものとの共存を維持し調和させるための重要な力として、精霊が与える様々な概念をどのように理解することができるのでしょうか。このような土着の、信仰に基づいた知識が、どのように私たちの世界を再構築し、グローバル化がもたらす問題を対処するための強力な通路となり得るのでしょうか。
この展覧会のアーティストたちは、土、自然、動物、民間伝承、シャーマン、儀式、共同体の信仰に目を向け、
それぞれが直面した現代の状況に立ち向かい、私たちがどこかでつながっている感覚を再構築します。伝統の中に身を置き、同調することで、私たちを支え、動かしているものを見つめ、共感と、人が持つ本来の力を呼び起こし、私たちに人類とその先にあるものを意識するよう促します。アーティストたちは目に見えないものや人間でないものを視覚化し、変化させることで、批判的かつ創造的に、持続可能性と共存の実践を再考するための道筋を提示します。
この展覧会は、アジアの異なる地域から5つの視点をもたらし、小豆島やそのコミュニティと対話することで、アジアにおけるレジリエントなコミュニティの連帯を構築することを目指します。このプロジェクトは、アーティスト、またはグループによって活性化された5つの拠点によって構成されています。
リノ・ヴス(ササ・アート・プロジェクト、アーティスティック・ディレクター)
サイトA:カンボジア
クヴァイ・サムナン Preah Kunkong (The Way of Spirit), 2016-2017
クヴァイ・サムナンは、東南アジアにおける最後の大森林、アレン渓谷に住む先住民族チョン族のため、活動に取り組んできました。アレン渓谷は、天然資源と希少野生生物の宝庫です。その一方で、大規模な水力発電ダムの開発による環境破壊、その結果もたらされる先住民族の生活の変化を象徴しています。
クヴァイは1年間、チョン族のコミュニティでその後も続く関係を築き、リサーチを行うなかで、土地のことを理解するようになりました。振付家・ダンサーのNget Radyとともに制作したこの作品は、チョン族とその土地とのつながりと、彼らの最も強力な抵抗の姿が込められています。
—Hendrik Folkerts(『documenta 14: Daybook』から抜粋)
アーティスト:クヴァイ・サムナン
1982年スヴァイリエン州で生まれ、プノンペンを拠点に活動中。ユーモラスで象徴的なジェスチャーを用い、過去と現在の出来事や、伝統的で文化的な儀式に新しい視点をもたらしています。
クヴァイは、植民地主義やグローバリゼーションが及ぼす人道的・生態学的な影響に焦点を当て、制作過程においても地域コミュニティと直接関わり、文化、地理的なコンテクストだけでなく、制度的な背景にコミットした作品を作ります。
パートナー:Sa Sa Art Projects
2010年カンボジアのアート集団Stiev Selapakによって設立された以来、教育プログラム、展覧会、アーティスト・イン・レジデンスなどを通じてカンボジアの若いアーティストと深く関りを持つ活動をしています。
Sa Saは、カンボジアの現代美術における教育およびインフラの欠如を、討論の場を設けることで解決を目指し、硬直した組織構造に縛られないことで、コミュニティのニーズに適応していくことができると信じています。
サイトB:台湾
サマー・ファン&ツァイ・ジアイン Blessings from Sunshine, 2022
太陽は偏りもなく淡々と輝き、地球上のすべてのものを祝福してくれます。日差しは、夜になり太陽が沈んでも、温もりとして残り地上のものたちへの恵みとなります。
台湾で、地元の植物や自然環境から得たインスピレーションを有機的な形に変え、布に描きました。さらに地元の人々の参加による、手書きの言葉やドローイングを、サイアノタイプの技法を使って転写しました。文字やイメージは太陽光を浴びることで徐々に写し出され、台湾から日本へのメッセージとして、一針、一縫い、一念、一筆を捧げ、祝福の気持ちを伝える作品です。
アーティスト:サマー・ファン&ツァイ・ジアイン
大学院で出会った二人のアーティストは、地域社会に根ざしたテーマでユニットとして制作に取り組んでいます。彼らは地域の独自性を探求し、その物語を作品にすることを常に実践し、泥、鉄や布まで、多様な素材を積極的に使ってきました。地域から受取ったインスピレーションを生かした作品を作る一方、住民たちにもその制作過程に参加してもらうことで、参加行為自体も作品の中に盛り込み、社会や環境に対しての関心を高めます。
パートナー:台湾歴史資源経理学会
2004年に設立された台湾歴史資源経理学会(以下、IHRM)は、台湾を代表するNGO組織であり、歴史遺産の保存と持続可能な歴史資源の管理に取り組んでいます。IHRMは、歴史遺産を守り、歴史や生活文化の有形・無形の側面を評価し、自発的にコミュニティ形成に参加するよう、人々に情報を与え、鼓舞し、動員しています。
現在の主な関心と活動領域は、あらゆる年齢層の人々に歴史遺産の重要性と、それらをさらに適切に管理する方法について教育することです。また、多様性と人間性を尊重し、アジア文化の独自性の認識に貢献することを目指しています。
サイトC:インドネシア
アナン・サプトト EXPLORING FARMER GROUPS JOGJA X FUKUDA, 2022
Panen Apa Hari Ini(PARI)は、2020年にアナン・サプトトによって、インドネシアのジョグジャカルタにおける農産物流通を理解する試みとして設立されたイニシアチブです。当初、PARIはパンデミックによる都市への農産物流通の問題に対する取り組みを目的としていましたが、その後アートと農業をつなぐプラットフォームへと発展しました。各活動は、アーティストや美大生、食料生産者、農業愛好家、あるいは食料主権や地域社会における問題解決に関心のある人たちの協力によって展開されています。
今回、PARIはインドネシアのジョグジャカルタ市と日本の小豆島・福田との間における、食料の供給源や農業の実践を紹介します。この紹介には、デザインプラクティス、写真、ビデオ、イベントなど、芸術的なアプローチで加工された手法が用いられています。これらの様々なメディアは、2つのコミュニティグループにおける交流の全過程を促進し、また議論するために機能することを期待します。
アーティスト:アナン・サプトト
アナン・サプトトは、エコロジーと社会変革に焦点を当て、アートを、問いかけや新しい可能性を開く道具として用います。環境、人権運動を支援し、子ども、障害者コミュニティなどとコラボレーションを行うことが多く、コラボレーションは、彼の作品にとって不可欠な要素です。2020年、MES 56のコレクティブ・ディレクターに就任。パンデミック時代における取り組みとして、Panen apa hari iniを展開しています。
パートナー:チェメティ-インスティチュート・フォー・アート&ソサイエティ
1988年に設立された、インドネシアで最も古い現代美術のためのプラットフォームであり、アーティストやキュレーター、研究者、活動家、そして地域コミュニティと密接に協力しながら作品を開発、発表、実践します。2017年に新しいチームによって「芸術と社会のための研究所」という副題が加えられたチェメティは、社会的・政治的に関与する芸術的実践のみならず、市民活動の場としての可能性を追及します。
サイトD:香港
香港アートスクールの講師と卒業生
キュレーター:キュレーター:フィオナ・ウォン・ライ・チンと香港アートセンターチーム
Hong Kong Colours in Shodoshima: A Ceramics Showcase, 2021~present
《香港カラーズ》は、私たちが住んでいる土地を再発見することを目的として、継続的に実施されているプロジェクトです。香港の様々な場所で採取された粘土はさまざまな色をしており、香港の色のスペクトラムを形成します。
この作品は、地元の土を採集し制作に至るまで、単なる素材の選択だけでなく、人々がその場所をどのように発見し、理解し、共に生きているかという過程も重要な要素として取り上げています。そういった過程を通して、土地の記憶、コミュニティ、地域の文化との関係を見直すことを目指します。目に見えない内面のものを掘り下げ、芸術の癒しの力を探求し、相互につながった瞬間を理解する機会を与えてくれるはずです。
今回、福武ハウスの協力により、小豆島版を現地で発表することができました。素材の起源をたどることで、新たな道も開けるのです。
アーティスト:香港アートスクールの講師と卒業生
キュレーター:フィオナ・ウォン・ライ・チンと香港アートセンターチーム
アーティストは、香港アートスクールの現・元講師と学生45名で構成され、各地から集められた粘土に、香港に対する愛情にまつわる物語を布に書き、香港の色彩をコラージュしました。
プロジェクトの発案者であるフィオナ・ウォン・ライ・チンは香港アートスクールの講師を務めています。2015年、越後妻有トリエンナーレに参加し、2017年、内政局から貢献賞を受賞、香港芸術発展賞アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選出されました。
パートナー:香港アートセンター
香港アートセンターは、アーティストを育成・支援し、日常生活にアートを浸透させるためのプラットフォームとなっています。すべての人が芸術にアクセスできるようにすることをビジョンとして持ちながら、ビジュアルアート、パフォーミングアート、映像、メディアアート、コミック、アニメーションのプログラムを提供する他、芸術教育、会議、フェスティバル、パブリックアート、コミュニティプロジェクトなどにも取り組みます。
サイトE:タイ
コラクリット・アルナーノンチャイ&アレックス・グヴォジック Songs for living, 2021
祖父を亡くしたコラクリット・アルナーノンチャイは、悲しみ、変化、そして精神的な力を伝える物語を繰り広げます。撮影監督アレックス・グヴォジックとの共同制作によるこの作品は、幽霊、シャーマン、そして死にゆくウミガメ―メタファーであると同時に、訪れる生と死の間の媒体となります―の物語を織り込んだ、映像言語と音楽スタイルのコラージュです。パンデミックの最中、廃墟のようになったニューヨークで撮影されたこの抽象的なモンタージュは、喪失と悲しみに直面しながらも前進する方法を探します。神話的なシンボルを通して、軍政、王政、民主化運動によって特徴づけられるタイの社会的、政治的現実も取り上げ、スピード感のある展開が加わり、人生の出来事に圧倒されている私たちの感覚を映し出します。
アーティスト:コラクリット・アルナーノンチャイ
コラクリット・アルナーノンチャイは、作品を通して物語の宇宙を繰り広げます。政治的な出来事や歴史、現代への疑問と、個人的な経験を題材として選び、実験的なアプローチを通じて、オーディオとビジュアルの素材を収集しています。
アレックス・グヴォジックは、撮影監督兼アーティストであり、アート、ファッション、音楽など分野を横断しながら国際的な舞台で活躍します。イメージとコンセプトの両方において、特徴的な鋭さを体現します。
パートナー:ジム・トンプソン・アートセンター
2003年に設立されて以来、現代美術のための場を創造することによって、芸術活動やその試みを促進することに力を注いでいます。2021年新たに、バンコクをはじめ世界各地で現代アートを多様に体験できるアートスペースが完成しました。地域や国際社会と共鳴しながら、コミュニティにおける重要な問題に取り組む、包括的なアート組織となることを目指していきます。
運営:ジェームズ・H・W・トンプソン財団
アジアン・シネマ・ナイト
アジアン・シネマ・ナイト
協同展に参加するアジア地域の短編映画やドキュメンタリーを上映します。
- 日時
- 2022年8月20日(土)、21日(日) 19:00~21:00
- 定員
- 50名
- 場所
- 福武ハウス体育館
- 料金
- 瀬戸内国際芸術祭2022パスポートまたは福武ハウスの入館チケット(510円)の提示で無料、15歳以下無料
- 予約方法
- お電話(0879-62-9301)またはメール(fukutakehouse@fukutake-artmuseum.jp)で「代用者氏名」「参加人数」「連絡先」をご連絡ください。
予約専用サイト(https://fukitanomoriterrace.stores.jp/)からもご予約いただけます。