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豊島八百万ラボが結んだ縁――「島の時間」が生んだ島民と来訪者のエピソード

ベネッセアートサイト直島のWebサイトでは、2019年10月から11月の間、豊島八百万ラボを訪れて体験した「縁」に関するエピソードを募集しました。恋愛に限らず豊島での人との出会いなどさまざまなエピソードが国内外のみなさまから寄せられた中、特に印象深い内容だったのが、ニックネームtaaさんから投稿いただいたエピソードです。以下に投稿いただいた全文をご紹介します。

豊島が好きで、この数年毎年のように遊びに行き、おととし昨年と「民泊あかり」生田さんのところへ宿泊させてもらっています。
漁師であり発明家でもある生田さんのお話はとてつもなく面白くて、なによりも楽しんで漁をしていらっしゃることが、人生そのものを楽しまれていて、心の師匠と勝手に呼んでおります。
昨年生田さんから、八百万ラボのお話を聞いて、動画を見せてくださったり、いろんなお話をして、身の上話までさせてもらい...、なんと、生田さんが分身のように大切にされていた八百万ラボの御守りをくださいました。ものすごく強力な壮大な御守りです。
わるい虫がつかんように
ええ虫がつくように‼︎...って!
もう嬉しくて嬉しくて。
生田さんご夫婦仲良くて、お話聞いてていつもいいなぁっておもっていました。
「豊島が好きなこにあげようとおもって
ずっとあっためといたんや 」って
こんなに嬉しいことって...
違うところにいても生田さんのこと想い出して、豊島の美しい景色を想うことができました。

生田さん
ええ虫見つけますで!と毎日大切に御守りを持ち歩いておりました。

そしてそして、長年かかってええ虫がつかなかったわたしに、ええ虫がつきました!!

ええ虫がついてすぐに生田さんにご報告させてもらい、こちらの豊島八百万ラボエピソードのことを聞きました。

今度ええ虫と一緒に生田さんに会いに、豊島へ行くのが楽しみです。

投稿エピソードに登場する生田清人さんは、甲生地区で「漁家民泊あかり」を経営されている漁師さんで、実は豊島八百万ラボに展示している作品「運命の赤い糸をつむぐ蚕 - たまきの恋」に島民を代表して出演されている方でもあります。そんな生田さんのもとを、taaさんに投稿いただいたエピソードについて詳細をうかがうべく訪ねました。

豊島・甲生地区で「漁家民泊あかり」を経営する生田清人さん
豊島・甲生地区で「漁家民泊あかり」を経営する生田清人さん

「豊島は恋愛の島でもあるし、ええ虫が見つかればええなと思って」

生田さんとtaaさんの出会いは約3年前にさかのぼります。最初はtaaさんが友達の紹介で「漁家民泊あかり」に宿泊したことがきっかけでした。

「これが民泊の良さなんやけど、一緒にキッチンでご飯を作って食べながら話をしていたらお互い打ち解けて、親しくなるんです。それで、2回目に来てくれた時に身の上話になって。その子は前向きな人やと思うけど、仕事のこととか人生の面において、いろいろあったみたいなんですわ。話をしてるうちに、幸せになってほしいなと思って、八百万ラボの御守りをその子に渡しました。豊島は恋愛の島でもあるし、悪い虫やなくて、ええ虫(良い人)がついたらええなと思って」

taaさんに渡した御守りは、2016年に豊島八百万ラボがオープンした時に記念に一つだけ買い、ずっと大切に取っておいたものでした。豊島八百万ラボでは、縁結びの神様でもある豊島・檀山の豊玉姫神社からご分霊をいただいてお祀りをしています。taaさんに渡した御守りには、縁結びの神社のご利益があればという生田さんの思いが託されていたのです。

「(御守りを渡して)1年ぐらい経っとったんかな? 豊島に毎年来てくれてよったんやけど、その子が忙しくて来れない年があって。そんなんしょるうちに、『ええ虫が見つかりました!』ってメッセージを送ってきてくれたんですわ。ほんまにできたんですよ、彼氏が。僕も良かったし、その子にとっても良かったと思います」

「運命の赤い糸をつむぐ蚕 - たまきの恋」
2020年2月11日に公開を終了する作品「運命の赤い糸をつむぐ蚕 - たまきの恋」(写真:表 恒匡)

「若いお客さんが甲生地区に来るきっかけができたから盛り上げたい」

生田さんの民泊は、もともとご自身が生まれ育った実家でしています。現在は仕事の都合のため家族で小豆島へ移住していますが、民泊を通して豊島を盛り上げたいという思いから9年前に「漁家民泊あかり」をオープン。2016年に豊島八百万ラボが甲生地区にできてからは、アート施設が来訪者と地域の人にとっての交流の場になっていたと生田さんは言います。

「せっかくああいうアート施設を作ってもらって、若いお客さんがこの地区に来る一つのきっかけができたから、私たちもできる限り盛り上げていきたいと思とるんです。都会から来た人と、甲生地区のおばあちゃんやおじいちゃんと縁ができて、次に島へ帰ってきた時にまた会えたら、お互いに楽しいんじゃないかな。島のお年寄りも東京に孫ができたみたいに思って、島で採れたみかんや野菜をあげたりして張り合いができてるみたいです」

生田さんは民泊を経営する傍ら、本業は漁師さんとして毎日のように漁に出ています。新鮮な豊島の海の幸や漁業体験を通して、宿泊者に豊島の豊かさを楽しんでもらえればと生田さんは考えているそうです。

「お客さんが来たら、必ず鯛を一匹、晩御飯に出すんですわ。それをみんなで料理して食べるんがうちの民泊の基本。若いお客さんはみんなビックリしますね(笑)。やっぱ都会の人たちからしたら鯛が丸まる一匹出て来ると驚くみたいです。鯛を目当てにうちに泊まりに来る人もおるぐらい。僕は別にお金にならんでも、島に来てくれる人に喜んでもらって、楽しんで食べていただいたらええかなと思っています。(島に人が来る)きっかけはアートやと思う。アートがなかったら多分、島もジリ貧で、目立ったこともなく、注目されることもなく、緩やかな線で降っていくと思うんですけど。せっかくアートができて人が呼べる島になったんやから、その島を何とか維持できるようにしたいなと思っています」

豊島八百万ラボの島民お披露目会でスプツニ子!さんと
2016年、豊島八百万ラボの島民お披露目会でスプツニ子!さんと(撮影:宮脇慎太郎)

「せっかく島に来たなら『島の時間』を楽しんでほしい」

「食とアートの島」として世界中から注目される場所になった豊島。瀬戸内国際芸術祭2019では14万人を超える方々が豊島を訪れました。たくさんの方々の来島を歓迎しながらも、駆け足でアート作品だけを見て回るのではなく、時間をかけてゆっくりと島を楽しんでほしいと生田さんは話します。

「芸術祭の時やったら時間に追われて、スタンプラリーみたいに『あれも行かないかん、これも行かないかん』言うてせわしない人も多いんやけど、そうじゃなく、のどかな島の景色を見たり、島の物を食べたり、地元の人と触れ合いながら回った方が面白いと思う。豊島には地区ごとにええところがたくさんあるんです。夕陽がキレイなとこもあるし、唐櫃の丘の清水いうところでは自然の湧き水があるし。島の人からしたら、美術館と一緒にそういうところをゆっくり見るような時間配分をしてほしいんですわ。せっかく島に来とんやから『都会の時間』やなしに、『島の時間』を楽しんでくれたらええと思う」

生田さんが宿泊者に渡している名刺の裏には、〈「おかえり」「ただいま」を合言葉に。〉という「漁家民泊あかり」のキャッチフレーズが書かれています。それは、民泊をはじめた当初からの生田さんの思いであり、今回のtaaさんの御守りを巡るエピソードも、そんな「漁家民泊あかり」ならではの特別な関係性の中から生まれたものでした。

「一遍だけじゃなくてリピーターになってほしくて、そういう僕の気持ちを名刺の裏に書かせていただいとるんです。お互いに年を取りながら、お客さんと長い付き合いができればええかなと思って。僕はお客さんから都会の話を聞くのがごっつ好きなんです。僕は田舎の話しかできんけど、都会は今こんなんや、海外ではあんなんや、っていう話を聞けるのが面白い。泊まるだけじゃなくて、豊島の家主と一緒にご飯を作って、食べながらお互いいろんな話をするのが僕はほんまの民泊かなと思うんです」

taaさんと「ええ虫」との縁、taaさんと生田さんの縁、来島者と甲生地区の方々の縁――。豊島八百万ラボの存在がきっかけとなって、甲生地区にたくさんの縁が生まれました。豊島八百万ラボで展示している作品「運命の赤い糸をつむぐ蚕 - たまきの恋」は2月11日に行われるトークイベント当日を最後に公開終了となりますが、豊玉姫神社と豊島八百万ラボの縁結びの神様は、今後も素敵な縁を豊島に広げていってくれることでしょう。

<豊島八百万ラボ トークイベント開催のお知らせ>
2020年2月11日(火・祝)にアーティスト・スプツニ子!とキュレーター・長谷川祐子を迎えたトークイベントを甲生集会所にて開催します。2016年より豊島八百万ラボで展示している作品「運命の赤い糸をつむぐ蚕 - たまきの恋」をアーティスト自身が振り返るとともに、未来について語ります。
トークイベントの詳細はこちらをご覧ください。

ストーリー一覧

豊島八百万ラボ スプツニ子!アーティストトーク――作品が豊島に残したもの

2020.03.11

豊島八百万ラボ スプツニ子!アーティストトーク――作品が豊島に残したもの

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2020.02.07

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「ウォールドローイング・アット・ベネッセハウス #404」――作品の与えた影響と穏やかな制作の記憶

2020.02.04

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2019.12.30

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2019.12.06

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須田悦弘 ベネッセハウス展示作品「バラ」公開メンテナンスの記録

2019.11.07

須田悦弘 ベネッセハウス展示作品「バラ」公開メンテナンスの記録

ベネッセハウス パークの開館に合わせて展示された「バラ」(2006)のメンテナンスのために、作家・須田悦弘さんが直島にご来島されました。作家本人によるメンテナンスの他、その前日にはベネッセアートサイト直島スタッフを対象としたトークイベントなど、須田さんが来訪した2日間をご紹介します。記事を読む

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