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日本・デンマーク外交関係樹立150周年に際した、瀬戸内海の島々訪問とシンポジウム

一年をとおして日本・デンマーク外交関係樹立150周年を祝うイベントが行われた2017年。その一環として、自然・アート・建築・地域振興の可能性を共に考えるため、デンマークの著名な建築家やアーティスト、学者、文化庁などの行政関係者による代表団が10月9日から11日までの3日間、直島、犬島、豊島を訪れました。この訪問では、2017年夏にコペンハーゲンとオーフスで開催されたシンポジウムでのディスカッションが引き続き行われました。(デンマークでのシンポジウムの様子はこちらから)今回のベネッセアートサイト直島訪問プログラムは、アーティストの杉本博司氏と直島町長の濵中満氏が講演を行った10月11日のシンポジウムで幕を閉じました。

直島、犬島、豊島を訪れた参加者たちは、島の自然の中で展開されているアート作品や建築物を視察するだけでなく、島民の方々との交流、アート活動の基盤をなす自然環境や町の風景にふれることで、デンマークのシンポジウムで交わされた刺激的なディスカッションの理論的枠組を具体的な実感として直接体験することができました。

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犬島 くらしの植物園で地元の住民によるできたてのピザを楽しむデンマークの代表団

多くの参加者は、それぞれの作品が身体や気持ちに楽しみをもたらすことを指摘しながら、三つの島のアート作品と建築の質の高さを賞賛しました。建築家であり、デンマーク王立芸術アカデミー前会長であるジョニー・スベンボー氏は「西沢立衛と内藤礼による豊島美術館は傑作だ。アートと建築が気持ちよく融合している珍しい例であり、自然の宗教的賛美とも言える」とコメントしました。

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豊島美術館 内藤礼「母型」 (2010年) 写真: 鈴木研一

デンマークからの訪問者たちの多くがアート作品と自然との距離の近さに驚き、それがベネッセアートサイト直島の重要なテーマであること、大きな可能性を秘めていることを強く感じました。デンマーク王立芸術アカデミー(建築・デザイン・保存学部)の学部長であるアルネ・ホイ氏は「自然がアートと建築に溶け込んでいる様子は、この訪問で学んだ大切なことだ。この自然とのつながり方はデンマークのものとは異なり、より建築や文化に溶け込んでいる」と話しました。

瀬戸内海の島々という特定のコンテクストの中でのアートと建築の融合や、地域に新しい命を吹き込む触媒としてのアートの力についても参加者の多くがコメントしていました。アーティストであり、デンマーク芸術振興財団の視覚芸術委員会の委員長でもあるソレン・ターニング氏は「犬島には魅了された。ひとつの建物が小さな町の生活と共に成長してきた様子も、古いものと新しいものが結びついていることもすばらしい。建物はその壁を越えて、周囲のコミュニティに直接貢献できるのだ」と述べました。

オーフス建築大学の助教授であるシモン・オステンフェルド氏は、ベネッセアートサイト直島のアートと建築と自然の組み合わせが「 (瀬戸内海の島々の)文化遺産を保存しつつ、再生し、広めている。そうすることで文化交流を活性化し、地元の人と来訪者を幸福にしている」という感想を残しました。

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一緒に食事をして、島に関する意見交換を行った後で豊島の島民たちと

建築家であり、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 2016のデンマーク館の共同委員をつとめたボリス・ブロルマン・ジェンセン氏は、島におけるアート活動というコンテクストについて、「すでに確立された "文化の中心" の外側に文化のネットワークシステムを築くというとても刺激的な例だ」とコメントしました。

訪問のハイライトのひとつは、直島ホール(直島町所有)を見学しながら、設計を担当した建築家・三分一博志氏による説明を受けたことでした。三分一氏はデンマークとの深いつながりを持つことから、150周年記念行事の親善大使もつとめています。この町民会館の複雑ながらもなめらかな構造と建築コンセプトを知り、アルネ・ホイ氏は「伝統的な建築遺産と工芸を解釈する上で、とても洗練されていて刺激的な例だ」と述べました。

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デンマークの代表団に直島ホールの紹介をする三分一博志氏(左から4人目)

ベネッセアートサイト直島のアートと建築、そして自然の中を歩き、呼吸し、感じた内容の濃い3日間は、最後に行われたシンポジウムで幕を閉じました。シンポジウムの目的は、デンマークで交わされた議論を生かし、瀬戸内海の島々を実際に訪れた代表団の印象と、ローカルかつグローバルな見識を共有することでした。

「直島から世界へ―自然・アート・建築・地域振興の可能性を共に考える」というテーマのシンポジウムでは、杉本博司氏が基調講演を行い、二日前にオープンしたばかりの小田原文化財団 江之浦測候所を紹介するとともに、その背景に四半世紀近い直島との関わりがあり、特にここでの建築への取り組みを含む実験が、自身の小田原文化財団の各施設の実現に繋がったという貴重な話がありました。

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直島での様々な作品とオープンしたばかりの小田原文化財団 江之浦測候所を紹介するアーティスト・杉本博司氏

特に、ベネッセハウス ミュージアムのテラスでの写真シリーズ『海景』の画期的な屋外展示から、その後の崖に直接掛けた展示、護王神社でのアートの視点を通した宗教建築の再解釈、そしてベネッセハウス パークの地下で魂に思いを馳せる空間の創造へと、杉本氏は直島との絆がさらに強いものにるにつれ、アート、写真、建築という枠組みを超えた活動に挑み続けてきました。

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家プロジェクト『護王神社』 杉本博司「Appropriate Proportion」(2002年) 写真: 杉本博司

続いて、より地域的で実践的な視点から、直島町の濵中町長は町の確かな産業的基盤や人口減少問題に立ち向かう現状を説明しながら、島の政治的、地理的、社会経済的コンテクストを紹介しました。直島町は人口減少問題に取り組みつつ、島の子供たちに最高水準の教育を確実に提供することを目指しており、十分なインフラを整備するために長期的で先進的な政策を通して、直島の輝かしい未来を創ろうと努めていると話しました。また、1970年代から建築家・石井和紘の作品が制作されていたこと、約30年前にベネッセアートサイト直島の活動が始まったことに触れつつ、島とアートと建築の関係についても解説しました。SANAAによる海の駅『なおしま』のような高い評価を受けている公共施設を依頼してきた実績は、直島がアートの島になることを地元の自治体が熱心に受け入れていることを示しています。もちろん増加している島への旅行者を快く迎えるためのインフラ整備もしっかり行われています。濵中町長は、直島のような小さい町ならではのメリットを強調し、地元の関係者全員が身近で緊密な関係を築くことが島の明るい未来を確かなものにするためのカギになると主張しました。

デンマークの代表団からのコメントや質問の時間では、ジョニー・スベンボー氏が「アートと建築は理論的、学術的、思想的な関係であるが、実際にアートや建築がどのように自然に溶け込むことができるのか、そして人々の生活にどのような影響を与えることができるのかを体験することはとても感動的だった」と述べました。オーフス建築大学の教授モゲンス・A・モルゲン氏も「ベネッセアートサイト直島ではアートと建築と自然の間の境界はとても狭く、現在進行している新しい領域の探求は過去と未来の両方だけでなく、過去の中に未来を見せてもくれるものです」とコメントしました。ディスカッションに参加したベネッセアートサイト直島代表の福武總一郎もここで30年間にわたって積み上げてきた活動の狙いは「アートを手段として、島や地域を活性化していく、良くしていく」ことであることを強調しました。

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シンポジウムのまとめのコメントをするキム・ハーフォース・ニールセン氏

シンポジウムの総括として、デンマーク芸術振興財団の建築委員会の委員長であり、建築事務所3XMの創始者でもある建築家キム・ハーフォース・ニールセン氏は、すでにある建物を使うことが、その場所の物語を語ること、その場所の記憶をよみがえらせること、そして物語がその場所にしっかり根付くことに、どれだけ強い力を持つのかということを強調し、「建築とアートは共に働き、ひとつになることができる。それによって、建築とアートは島全体の発展を引き起こすことが可能なのです」と述べました。ベネッセアートサイト直島のインターナショナル・アーティスティック・ディレクターである三木あき子も彼の意見に賛成しつつ、人が働き、交流し、実験をし、長期的に絆を築いていく時間と場所を提供することは、触媒的な役割となって相乗作用を発揮し、様々な問題を抱える私たちの時代にとって非常に重要な環境を作っていると主張しました。瀬戸内海の島々での試みが示す方向性は、デンマークだけでなく世界中で同じような問題意識を持ち、未来のためにより良い生活環境を育みたいと考えている人や実践している人に重要な刺激を与えるものです。

この記念的なイベントをとおして、デンマークと日本の両国の参加者の間で交換されたアイデアや意見が瀬戸内海とデンマークの島々、あるいは世界の他の場所で広まり続け、さらなるインスピレーションとなることを願っています。

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